第3話






「ねえ、人殺しの内部人格って、どんな気持ち?」





 ここは、いつも同じだ。

 俺が生まれた頃から、一箇所として変わらない。


 高級ホテルのロビーのような空間。


 客なんて来ないのに、いつもライトが煌々と光っているし、床は磨き立てのようにピカピカに輝いている。

 ただ一人、部屋も名前も与えられていない俺は、いつでもそのロビーの無駄に豪華なソファで暇を潰している。


「知らないよ」


 俺はぶっきらぼうに言い返した。

 おそらくはいつものように後ろに立っている、この体を共有している別の人格・アヤセに。


「つまんないの。そんなんだから、いつまでも名無しのロビー暮らしなんだよー?」


「お前が殺しをやめてくれたら、お前の仕事も消えて、俺のぶんの部屋が空くんだ」


「それはないねー。ユウが殺意を抑えられる日なんて、永遠に来ないもん」


 うふふ、と耳元で笑い声がした。


「それくらい、あなたが一番わかっているんでしょう? 一番年上の名無しくん」


「……っ」


 殴り返してやろうと振り向くと、アヤセはもう消えていた。


 

 

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