第14話 ハッピークリスマス

 

 さっき絢の口元が語った言葉は一言『バーカ』だった。


 『バーカ』その言葉を繰り返しながらしみじみ自分が

本当の馬鹿者である事を悟った。



 半年前、絢は今すぐでなくていいから結婚を決めてほしいと

プロポーズしてきた。


 それを適当に聞き流し、やりすごしてきたのは紛れもなく

この自分。



 あれから直接絢に会っていない。


 それなのに自分の楽しい時間を過ごすことにばかりに

気持ちがいって、絢がどんな気持ちでいたのか考えても

みなかった。


 自分ではない誰かとの未来を選択できるという可能性だってある、

そんなことも自分には想像できていなかった。




「どーしたの?堂本くん。


 今の花嫁さんと知り合いだったの?

 堂本くんの方を見て花嫁さんが何か呟いたように見えたけど」


と後から追いついた大隈が話しかけてきたけれど

混乱してる俺には遠くから聞こえてくる雑音でしかなかった。


          ◇ ◇ ◇ ◇



 そんな俺に、絢に俺の存在を知らせた共通の友人である

渡部佳代子が近づいて来た。



俺は訊いた。


「どういうこと? 何も聞いてない」



「うんっ、だって誰も海に教えてないから。


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