第12話 ハッピークリスマス


 せめて25日中にはプレゼントを渡したいと思った俺は、25日に

同期数人で街に繰り出したその後で、夕方から絢の家に行って

みることにしようと考えた。


 絢のことを考える一方で、気心の知れた同期たちと過ごす

クリスマスのことも楽しみにしていた。


 今日は男3人女子3人の6人でカラオケしてその後皆で

遅めのランチを済ませ山の手の街をブラブラと歩き、そのあと

繁華街にある駅で解散しようということになっている。


 山の手の異人館の建ち並ぶ街はひと昔前、TVで話題に

なったことがありなかなかロマンチックな雰囲気が漂っている。


 そぞろ歩きするも街並みが異国情緒たっぷりで、あちらこちらの

家々の造形が素晴らしく俺たちの視覚を楽しませてくれる。


 そんな中、俺の傍を歩いていた大隈可南子が

突然感嘆の声を上げた。



「うわぁーっきれいな女性、あーっお相手も

めちゃくちゃ素敵っ」



 大隈の視線の先を目で追うと、今まさに教会から出てこようとしている

素敵な一組のカップルが見えた。



 教会も彼らも周りに集う人々も厳かで何もかもが、この山の手の街に

しっとりと馴んでいた。





 目を擦ってみた。


 何度擦っても花嫁は絢だった。


 しかし絢であるはずがない。

 

 絢には自分という彼氏がいるのだから。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る