第10話 ハッピークリスマス

 

 なので年初めに真剣な交際を申し込まれたときは心底驚いた。


 こんなすごい話を今まで失念していたとは。


 海との付き合いがあまりに長かったのと、私自身の他所見は

しない一途な性格が、石橋氏の申し出話を記憶の中から消して

しまっていたのだろう。



 石橋さんは皆の期待を裏切らないイケメン紳士で大人だった。


「中学から付き合っている彼がいます。

私には勿体無いぐらいのお話ですがお受けできないんです」


と告げた私に彼はこう言った。


『この先、僕の申し出を思い出すことがあったら迷わず

声をかけてほしいな。

 一度断られてすぐに気持ちがなくなるような半端な気持ちで

松村さんに声を掛けたわけではないからね』と。


 今がまさにあの日石橋さんが言ってくれた迷わず声を

掛ける時なのだ。


 私に涙は似合わない。

 振られて泣くような。


 半年も前の話なので時すでに遅しの可能性は大いにある。

 だが実行あるのみ。


 交際→ウエディング→出産→幸せな家庭 


 旦那さまGet、かわいい赤ちゃんGet、そしてそして幸せな家庭Get

叶えてみせるわ。



 海のことは吹っ切る。



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