第9話 ハッピークリスマス 


 

 そう、あの日の悔し涙と共に。


 どうしてこんなに情けないの?

 どうしてこんなに悔しい想いをしなければならないの?

 どーして?  どーして?



 こんなに涙が出るの?

 こんなに人に縋ろうとしたことがあっただろうか?

 私はこんなに泣く女だった?


 自分に問いかけながら泣いている途中で、突然アホらしくなった。

 そして天からこんな声が聞こえた。



 結婚相手に考えられるのは堂本海だけなのかい?

 世の中半分は男じゃないか。 

 別の誰かであっても自分を想ってくれる人がいたら

その人でもいいんじゃない?


 周りをよく見てごらん。



          ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 実は半年程前に5歳年上の石橋祐二さんから結婚を前提にした

交際を申し込まれていた。


 我が社に残っている数少ない素敵な独身貴族の一人。


 結婚が決まっている同期の中にも、いつか石橋さんから声が

掛からないかと期待していた者も少なからずいた。


 恋愛が上手くいかなくなった時、社内恋愛だと難しいから

きっとどこか他所で可愛い彼女を作っているのではないだろうか?

ということで我が同期メンバー内ではそのように話にオチを

つけていた。


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