第6話 土流夜
今何時?
あんたねえもう真っ暗よ
大丈夫
気をつけてね寒いし
大丈夫
固く凍った地面は痛いのに
とある夜のお話たち
流れるときに逆らわない
〇〇〇〇〇〇
今日は土曜日。土曜日の三分の二が過ぎたあたり、この季節の外はだいぶ暗いです。彼らはたった今冬の散歩へと出発しました。厚着をしてライトを持って、リードをしっかりもって。嬉しそうにしっぽを振る犬の名前はトミー。意気揚々と走りだすから、転ばないようにあとをついていきます。
ジャリジャリさくさく
霜ばしら
しゃりしゃりグチャグチャ
みぞれ
どっちも踏みつぶして
歩く
息が白い
犬の散歩
何がそんなに楽しいんだよ
ゆっくり行こうぜ?
なあ?
風が吹けば薄く積もっていた雪が顔にかかる
それでもずんずん進む
ほとんど僕のほうが散歩されてる
気分転換になっていいかもな
勢いに負けて凍った地面をちょっと滑りました。ちょっと楽しくなって何度も滑ります。スケート選手のようなスピンもジャンプもできないけど。だんだんと勢いもスピードも増してきました。あ、滑らないほうがいいのかと焦ってやめます。
ああ勉強しなくちゃ
寒いなら厚着して
暗いならライトをつけて
そんな簡単な問題ばかりじゃない
穴があったら入りたい
声の届かないところに
どこか遠くへ
子どもでいたいのに
早く大人になりたい
今何時?
もう遅い
寒いなら動きなよ
暗いなら目を開けなよ
大丈夫だいじょうぶ大丈夫
凍った固い地面は痛くない
滑らないよう転ばないよう
そっとそっとね
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