第4話 飛流夜

 今何時?


 10分しか過ぎてない


 寒かったから長く感じたんだよ

 おごりね


 はいはい、ただいま


 おかえり




 後ろを飛んで過ぎてゆく雪たち


 飛流夜ひりゅうや




 とある夜のお話たち


 流れるときに逆らわない




 ◯◯◯◯◯◯




 今日は火曜日。火曜日の四分の三が過ぎてみんな帰り足です。彼女は待ち合わせ中。雪もちらついて寒くなって、おしゃれスカートが寒い。外じゃないけど天気予報の言うことを聞いてもっと防寒してくればよかったなんて考えながら、当然のように遅れる彼を待ちます。今日はもうすぐ来れるらしいです。それまでイヤホンして彼の作るメロディに酔っていきます。それよりもっと酔わせてくれる美味しいお酒も期待しながら。いつも居酒屋で飲んで騒いでカラオケで飲んで騒ぐ。

 プロポーズは終わっても二人はまだ遠距離。



 飛んで火にいる夏の虫

 もう冬だから雪だ

 淡い光の周りに

 雪が飛んでいる

 光の中に飛び込まない

 光があるから影もある

 とけない雪がそこだけ残っていて

 どうしても消えない不安のようで

 冷たい雪たちも髪にまとわりつくから

 首を振って落とす

 できることならあなたのそばまで飛んでいきたい

 だけどうっとおしくなりたくない




 ライトに囲まれるあなたの元へ

 風に乗って飛んでいきたい

 それもできないから

 私はここで待っている




 今何時?そろそろ帰らなきゃ


 なあそろそろ一緒に暮らさないか

 もっとそばでおかえりって言ってほしいよ


 なんであんたはいつもカラオケで大事なこと言うのよ!




 後ろを飛んで過ぎてゆく曲たち

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