第8話 星流夜

星流夜



流れるときに逆らわない

よるのおはなしたち



夜になったから眠りなさい

ほらお日様が登ったから起きなさい

いつまでちんたらやってるの

時間には限りがあるのよ

そんなことじゃずっと

あなたはその程度なのよ



わたしはそんなもの?

そんなことない

私はそんなもののためにいるわけじゃない

じゃあなんのために生きてるの

まだ理由はないけれど

そんなものじゃない

何もなくったって物語だ

始まらなくても私の物語だ


理由もなく生まれたって?

理由もなく死んだって?

バカいってんじゃないよ誰かの物語だ

みんな生きている

生きる理由なんて探しながらでいい

見つからなくったっていい

そんなことを理由に死にさえしなければ


世界は動いている

地球は動いている


だからほらごらん

星は流れて月は綺麗ですね

月は浮かんで雲海に溺れる

雲は残って陽は淡く

日は沈んで火の用心

火は飛んで水はあふれて

水は凍ってこたつで鐘の音

鐘は鳴って華やかな街で

毎日が流れていく


なにかに流されぬよう

うまく流れるよう

つまらないように

ふさがないように

じゃまにならないように

それでもここにいることを主張しながら


空を見上げて星をごらんよ

星が見えないのなら

街の灯をごらんよ

明かりが見えないのなら

人をごらんよ

ひとも見えないのなら

目を閉じるよ

浮かんでくるものを見ようよ

まるで世界にただ一人になったかのように

流れるときに逆らうように


そうしてこの世界はいっとき止まる



そのうちまた当たり前のように流れだすよ

目を開けるよ

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星流夜 新吉 @bottiti

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