第45話 南庭( 1 )
どれくらい眠ったか、桜子は分からなかった。
意識は混濁していたが絶えず部屋には人の気配がし、伊織がかいがいしく世話を焼いてくれた。それが功を奏して、まもなく桜子は起きられるようになった。まだ体の奥に熱の名残はあるが、徐々にそれも気にならなくなった。
動けるようになると、こんなところでじっとしていられる桜子ではなかった。体がすっかり
桜子の快復を伊織は喜んだが、外へ出たいという申し出には表情を曇らせた。
「まだ病み上がりの体ですからね。でも私が付き添う分には構わないでしょう。少しだけ
ずっと同じ場所にいたため分からなかったが、屋敷は想像を越える広さだった。いつも寝起きしている
南に面して五段の
風がそよいで
陽は少しだけ西の方に傾き、
外の空気を思い切り吸い込むと、桜子はつぶやいた。
「ここはとても静かね。他にもたくさん人はいるんでしょう」
「皆、
そういえば先日、一条の大路で
伊織によると、毎年四月半ばの酉の日に行われる賀茂祭はとても盛大なもので、宮仕えする者はもちろん、市井の人々も見物の準備に余念がないのだという。
辺りに匂う爽やかな香りは、
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