6日目(14)―いよいよ、対決へ

 ――20時00分


 ハーバースクエア501会議室内にいる全員が、固唾を飲んでテレビに注視していた。

 果たして、政府は要求に応じるだろうか? 

 皆、一様に考えていた。

 時刻が20時になったと同時に、テレビ画面の上部に「ニュース速報」の文字が踊った。会議室内の生徒たちも、一斉にその文字に目を凝らす。


〈ニュース速報 港館区の人質立てこもり事件で、総理が犯人との対話に応じることを決断〉


 その瞬間、会議室内は歓声にわいた!

「「「やったー!」」」

「「「よっしゃー!」」」

 生徒たちは拳を上げたり、互いに肩を抱いたりした。

「なんとか、ここまで来たわね」

 碧がほっとしたような表情で、龍馬に言った。

「あぁ、なんとかな」

 東海林も龍馬の肩を叩いた。

「こちら05。みなさん、やりましたね」

 百武の声もなんだかうれしそうだった。

「こちら01。あぁ、ついにここまで来た。ありがとう。ここまで来たら……あとは俺の番だ」

 そう答え、龍馬は表情を引き締めた。



――20時15分


 団総理による緊急記者会見が、NHKと民放全局で生中継された。

 先程のニュース速報は、総理の会見の準備が20時ちょうどには間に合わなかったためで、菱川の部下たちが記者クラブ経由でマスコミに速報を入れさせたのだった。


 団は記者会見の場に立つと、カメラを見据えこう語った。

「ハーバースクエアに立てこもっている犯人に告ぐ。内閣総理大臣の団だ。私は、君たちの要求である対話に応じる。その代わり、君たちにも約束してもらいたい。即時人質の開放だ。その確約がなければ、対話には応じられない。また、対話の方法については諸君らの返答を待つ。繰り返す……」


 団の会見は、このような簡潔なものだった。が、内心、はらわたが煮えくり返る思いだった。プライドの高い団には、犯人の要求に屈するのが我慢ならなかったのだ。

 

 犯人よ、どんな話を吹っかけてこようと、ひねり潰してくれる! 

 この団を、みくびるな!!

 

 ――団は、内心で大いにいきどおっていた。

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