1日目 ―スターティングオーバー

1日目(1)―スターティングオーバー

 まぶたを開けると、最初に天井のシミが見えた。


 そのシミは、まだ不確かな意識ながら、どこかなつかしくも感じられた。

 どうやら、いつの間にか寝入ってしまったらしい。

 体が重く、心なしか節々も痛む。

 

 ここは……事務所、か? 

 しかし、こんなシミあったか?

 

 頭をなんとか動かして、視線を左に振ってみる。

 なぜか、ハンガーにかかった学生服が見えた。

 まったく……どうやらまだ夢のつづきのようだ。

 にしても、恐ろしく、そして奇妙な夢だった。

 演説中に核が投下され、真っ白な世界で死神と契約を交わした……。

 いや、天使だったか?

 まあ、どっちでもいい。もうひと眠り――


『――ピピピピ! ピピピピ!』


 ループする電子音が、乱暴に意識を覚醒へと導いた。

 が、その電子音の出どころがわからない。

 まだ意識と感覚が直結されていないなか、適当な方向に手を伸ばすと、電子音の発信源をつかむことにようやく成功した。

 それを目の前に持ってくると、昔懐かしいだと認識できた。

 あぁ、このスマホか……たしか高校時代に使ってて……。

 

 ん? 

 ん!!


 動揺のあまり、龍馬は一旦、ベッドの上に正座した。

 

 待て待て、落ち着け!

 まずは、落ち着こう!

 

 自分に言い聞かせながら、改めて部屋を見回す。

 高校生の頃、使ってたベッド。

 高校生の頃、使ってた学習机。

 高校生の頃、使ってたハンガーラック。

 そして、通っていた高校の制服。

 そこはどう見ても、だった……。

 

 最後に、恐る恐る壁にかかったカレンダーを見てみる。

 そこには、残念なことにやはり「2018年」の文字があった。


「本当に20年前……なのか?」


 龍馬は、思わず独りごちた。

 さらに、スマホの日時も確認する。

 どうやら現在時刻は、2018年7月16日の午前6時2分、らしい。 

 再び、カレンダーに視線を戻すと、今日から6日後の21日のところに何か赤字で書き込まれているのに気づいた。

 よく見ると、血のように真っ赤な文字で、"GAME OVER"と書かれ、その上にはご丁寧にドクロのイラストまで描かれていた!


「うぉ――――――――――――――――――――――――!」


 龍馬は髪をきむしり、ひとしきり心が落ち着くまで絶叫を繰り返した……。

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