0日目(2)―サドンデス

『死神であり、天使でもある』



 意味がわからん!


『そもそも、俺は人間ごときには理解できねえ次元の存在でなぁ。ま、あまり深く考えるな』


 しかし――


『――おまえにチャンスをやる』


 チャンス?


『そう、チャンスだ。カンタンに言うと、おまえという存在がおもしろいから、もうワンチャンやろうって話だ』


 ワンチャン? なんの話だ?


『だから、結論を急ぐな。早死するぞ? あっ、もう死んでるか。フフフ』


 からかってんのか?


『ロスタイムだよ。おまえに人生のロスタイムをやる』


 ロスタイム?


『お上の気まぐれだ。現場のこっちは、面倒くせえだけだがなぁ。おまえにとっちゃ、悪い話じゃないと思うぜ』


 話が見えない。 


『要は、期間を区切って生き返らせてやるって話だ』


 本当か! 本当なのか? 


『あぁ、死神は嘘をつかない』


 やっぱり死神だったのか!


『天使でもある』


 もう、どっちでもいい!


『ただし、これは言わばサドンデスでなぁ。期限は6日。ちょうど、お上が世界を作り終えた日数だけ、おまえにもチャンスをやろうってルールになってる』


 7日じゃなかったか?


『最後の1日は、安息日だ』


 ……。


『この期間におまえが死にゆく運命を変えられたら、おまえの勝ち。さらに延長戦の人生がひらけるご褒美ほうびつき。変えられなかったら、おまえの負け。その瞬間で、ジ・エンド。今度こそ、本当の死が訪れる。まさにサドンデス、だろ?』


 ……どっちにしたって、このまま死ぬよりはマシだ! 


『フッ、そうこなくっちゃ。で、いつの時点から生き返らせるかは、俺の裁量に任されているんだが……おまえ、さっき、おもしろいこと言ってたろ? 20年前なら、なんとかなったとかどうとか……』


 待て! 死ぬちょっと前とかじゃないのか?


『いや、決めた! 20年前の今日から、おまえのサドンデスを開始する』


 おいおい、待て! 20年前なんて、俺はまだ高校生で――


『――残念ながら、俺がルールなんだ。それに、20年前の方が、断然おもしろくなりそうだろ? 高校生のガキに、果たして20年後の運命が変えられるか?』


 ちょ、ちょっと、待ってくれ!


『これはゲームなんだ。おもしろい方がいいだろ? せいぜい、おまえも楽しめ』


 だから、ちょっ――



『――ピピー、キックオフだ』

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