第13話 「6時間25分後」
今、草原を進む俺の後ろには子猫が2匹と子ドラゴンが1頭居る。
うん、日本でなら子猫2匹は有り得るよね。
でも、ドラゴン、君は無い。
「
「はい、何かがあるのは分かります」
「楓と水木はどうだ?」
「うーん、なにかモヤっとしたのは感じるけど・・・」
「おとーちゃん、もう一回見せて」
ちらっと後ろを振り返って、3人の顔の前の『力』の収束状況を見た。
結局、娘2人は俺にくっついて来た。
まあ、説得に失敗して約束したのだから仕方が無いと言えば仕方が無い。
それと
そうそう、佐藤先生から沙倶羅ちゃんの名前の漢字を教えて貰った時に一瞬、当て字過ぎるだろうと思った後に暴走族ぽいな、と思った事は内緒だ。
沙倶羅ちゃんがくっついて来たのは、ブレスの練習をする為だ。
現状、ブレスを使えるのは俺だけだ。種族的に残りのみんなはブレスを使える様にならない。
だが、ドラゴンもどきの沙倶羅ちゃんは使える様な気がする。
となれば、彼女自身及びみんなを危険から遠ざける為にも、遠距離攻撃が可能なブレスを沙倶羅ちゃんが使える様になる事は重要だし急務だ。
その為には俺が教えるしかない。
という三段論法ぽい理由で連れ出したが、実はそれだけでは無い。
彼女が俺に助けを求めている気がしたから誘ったのだ。
彼女が転生したドラゴンもどきも、猫もどき同様に希少種だろう。
それが証拠に、小冊子には載っていなかったし、俺たち以外の他の『被災者』は既知の種族だ。
それに加えて、体長が4㍍を軽く超える(初見時は尻尾を巻いていたので気付かなったが、首と尻尾を伸ばせば俺の4人分に近いから全長で行くと5㍍くらいか?)という巨体が、彼女に更に疎外感を感じさせた様だ。
まあ、分からなくもない。自分自身では顔は見えないが、見下ろした自身の姿はどう見ても巨体そのものだ。
『被災者』が転生する種族というよりも、むしろ危険だから退治されてしまう存在に思えるのだから。
ついでに言うと、仲が良い水木と一緒に居た方が心が休まると思った事も大きい。
沙倶羅ちゃんは上手く『力』を纏めている。これだけ収束していれば、『力場』を展開出来る様になるのもあと少しだ。
楓と水木の『力』は不安定で、収束も不十分だ。
まあ、それでもかなり上達した方だろう。
楓と水木は弱い方のブレス(俺の最大出力の数分の一程度だが)を撃てる様にはなっているし、焦らない様にしよう。
「よく見とけよ」
俺は、わざとゆっくりと『力』を収束して、その後でゆっくりと『力場』を形成した。
何回も3人に時間を掛けてやって見せたおかげか、ブレスの事が更に分かって来た。
2段階で放つと思っていたが、実は弱いブレスと強いブレスは別物だ。
弱いブレスはレーザーと言って良いと思う。
俺の知識ではレーザーというのは、筒状の発生器の中を光を何往復もさせて波長を合わせて最後には片一方から発射する『光』だ。普通は色が付いているが、本来は無色だった気がする。
ただ、食道で発生した何かを喉の奥で変換しているので、俺が知っているレーザーとは違う気もするが、発生方法自体が違うだけで、出している物はレーザーと言って良いだろう。
それに対して、強いブレスは謎だ。
威力と着弾跡からすると、実体というか物質を加速して発射している筈だが、その発射している物が分からない。
顔の前に『力場』を使って増幅機関と最終収束機関を展開しているから、最初はガンダ●のビームみたいなものと思ったが、あれって確か入力するエネルギーと見合わない威力しか無かった筈だ。
取敢えず、今は、”異世界だから”、”猫だもん”という事で納得している。
そうそう、レーザーを撃つ時は『力場』を発生しない様にした。その方が瞬時に使えるし、省エネだからな。
結局、佐藤先生が新たな『被災者』を発見するまでに強いブレスを撃てる様になったのは沙倶羅ちゃんだけだった。
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