錯覚痛覚

さて心臓を手に入れて何をかけたい?

さらなる血? 培養液? 針の山? それとも

エタノールで洗い流す

傷ついた訳でもないのに

心臓を持つ手が痛い

鼻につくアルコール臭

てのひらから伝う液体は ちりちりと肌を蝕むよう

心臓は赤だった

心臓は黒だった

鈍い、鈍い肉の色

結局、心臓は傷ついていなかった

あんなに痛いと叫んでいたのに

心臓に傷はない

傷ついたのは心臓を取り出すために

刃物を握り、胸を裂いて、擦り傷を作った手だけ

心臓を元に戻して 目が醒める

心臓は、痛かった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る