理想の赤ちゃん
「おめでとうございます。男の赤ちゃんですよ。」
やった!やった!遂に俺も一児の父になるのか!
明子、よかったな!
「ええ、あなた、ほんとうに...でもまだ三ヶ月よ。そんなにはしゃぐなんて、あなたの方が子供みたいだわ。」
ん?ああ、つい嬉しくなっちゃって...
でもよかったな、まずどんな顔立ちにするか決めようか。
「そうねえ、鼻筋のすっきりした子がいいわ。おでこが広くても可愛いわね。」
「そうですねえ、例えばこの鼻サンプルに似せますと、うん、僅かな操作でいけそうです。おでこは...胎児から摘出したオリジナルの遺伝子情報からすると...ちょっと大改造が必要かもしれませんなあ。」
そうですか、なあ明子、おでこはそんなに広くなきゃダメなのか?
「うーん、好みとしてはそうだけど...」
ほら、予算のこともあるわけだからな。
「今のままでいってもそう狭くなるわけではなさそうですよ。」
「そうですか、ではそのままでも...いいでしょあなた?」
それでいこう。次に目元だな、眉毛は太くもなく薄くもなくでいいだろう。目の色だけど、今は青が流行りなんだっけか?
「あらいやだ、それもう古いわよお。今は...そーねー、赤なんか流行ってるわね。お向かいの竹田さんとこも赤にするそうよ。それに、瞳が赤なら髪も赤で揃えた方がいいわね。」
赤ねえ...ちょっと派手すぎやしないか?
「いえいえお父さん、今は虹色の瞳なんてのもある時代ですから、特に派手というわけでも。原色系ならお安くすみますし。」
じゃ赤にしようか。口周りは俺と明子のを合わせたみたくしよう。
顔はこれでいいな。
次に最大身長だけど、これも二人の平均でいいんじゃないかな?
「あなたがいいならそれでいいわ。」
じゃ、先生、そういうことで...
えーっと、次の項目は性格傾向か。
俺はやっぱりスポーツマンに育って欲しいなあ。一緒に野球やるのが楽しみなんだ。
「わたしもテニス好きだし、それでいいんじゃないかしら。」
「スポーツ好きですね、承知しました。これはあくまで傾向ですので、成長過程で変化する可能性があります、ご了承下さい。さて次はIQ値ですが...皆さんおおよそ21世紀の平均値より15ほど盛られるようです。どうなさいますか?」
21世紀か、昔は生まれてくるまでどんな子かわからなかったんだもんなあ。想像つかない世界だなあ。
んで、明子どうする?
「今は人並みより賢くする親多いっていうわよ。生まれた時の設定値で学校も就職も影響あるっていうし、どうせなら賢く産んであげたいな。」
そうかあ。先生、試しに10上げると、あの、どれほど...?
「一番お金かかるとこですからねえ。こんなところでしょうか。」
うげ、こんなに...じゃ、そこから10増やして下さい、10!
「10ですね。ローンも承ってますから是非どうぞ。」
「あなた、大丈夫?」
ああ、バカに生まれてきて貧乏人の子供扱いされるのは可哀想だからな!俺が頑張れば平気さ、こんなくらいは!
「あなた...」
「頼り甲斐のあるお父さんでこの子は幸せだ。お見積もり完成しましたよ。」
結構いっちまったな...まあ明子との理想の子供を作るためだ、仕方ない。しかしわかってたことだが子供は金がかかるなあ...
「今は技術も大分進歩してまして、初期設定から殆どブレませんから、ご安心ください。我々の世代はまだ"失敗"がありましたからねえ。それでも操作技術開発前よりは圧倒的にマシですが。」
「そうね、出産が危険なギャンブルだったなんて、ちょっと信じられない話だわね。」
おいおい、気を抜いてもらっちゃ困るよ?明子には是非頑張ってもらわないとね。
「任せといて、あなた!わたし、立派に産んでみせるわ!」
「では、この後胎児の遺伝子操作作業に入ります。お父さんは外でお待ちください。2時間ほどあれば終わります。」
わかりました。よろしくお願いします。じゃ、頑張れよ、外で待ってるからな!
「ええ、あなた!」
SF短編集 飛田進 @tobitasusumu
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