第10話 ダークスライム討伐作戦 ~開戦編~
サラマンダーの情報によると、ダークスライムは森の中にある湖の近くで生活をしているらしい。
「もう、その湖は奴の体液に汚染されている。湖の周囲にいる動物や植物も汚染され掛けている。このままではこの島の植物や動物達の命が危ない。彼らの命が奪われれば、ドラゴニュートやリザードマン等の我々竜族の餌が無くなってしまう。それは避けなければならないからな」
という訳で、私達はその湖の近くに来たのだけれど、その現状は相当酷いものだった。
木々は葉が枯れ樹皮が剥がれ落ちていた。
木に触れると、柔らかい部分は簡単に崩れてしまい、地の藻屑もくずとなって消えてしまう。
「確かに、やばい所らしいな。自然に影響を与えるモンスターか。これは容易に近づくことさえも出来ない」
その湖の近くだけ他の場所とはかなり異なって、森の木々が枯れ果ててしまっていて、森が禿げている状態になっていた。
3人はさらに湖に近づいていく。
サラマンダーはいつの間にか竜人の姿へと変化していた。
どうやら、彼はいくつかの姿に変身することが可能なようだ。
「あそこだ」
サラマンダーが指をさした先には確かに水の溜まり場——湖のような場所が存在していた。
が、果たしてあれを湖と呼んで良いものなのだろうか?
何よあれ。
それは、最早湖とは違う何か別のものと化していた。
紫色に変色した水。
水面から吹き出るおびただしい夥おびただしい水泡。
さらに、水面から紫色のガスが出てきている。
「あれは毒です。毒耐性の付加魔法を今からお前達に掛ける」
「君はしなくて良いのか?」
「儂は毒耐性の体質を持っているから大丈夫だ」
「ありがとう」
湖の近くまで来たけど、近くには動物も植物も存在しない。
それほどに強力な毒性を持つ水となっているのだろう。
「それでは、先程の作戦通りに行きますぞ」
「うん。お願い」
サラマンダーは懐から透明の液体の入った瓶を取り出して蓋を開ける。
あれは、《聖水》だ。
呪術使いや悪魔、毒性の強い魔物に使うと有効だ。
「良し、出て来い。ダークスライム」
ヒュン、という風邪切り音を出して聖水は湖の中へと沈んでいった。
すると、中から化け物が現れた。
「貴様らかぁ・・・今・・聖水を・・・俺の・・テリトリーに・・・・掛けたのはぁぁぁ」
そう、そいつは《化け物》と呼ぶには相応しい姿をしていた。
粘着性の体に穴の空いた目と口。
両手はドロドロになり、手の原型を留めていない。
足は無い。
下半身は全て地面に付いていて、這うようにして奴は移動してくる。
言うなれば、こいつは【溶けかけの巨人】。
「容易に近づくんじゃないぞ。いくら毒耐性の付加魔法を掛けているからと言って、こいつに容易に近づいたらどうなるか分からないぞ」
攻撃パターンも分からない。
でも、聖水が有効だと言うことはこれではっきりした。
「みんな、聖水を持ったな。妾が先手を切る。2人は先程話した通りにやってくれ」
「無論だ」
「分かったわ」
こうして 私達は戦いの火蓋を切ったのだ。
魔王ちゃんとエルフちゃん 阿賀沢 隼尾 @okhamu
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