第9話 ダークスライム討伐会議

「ダークスライムか。聞いたことないな。どんな魔物なんだ?」

私とニャーレちゃんは、サラマンダーに訊ねる。


「奴は恐ろしい。本当に恐ろしい奴なのだ。儂の部下をこの1週間で50近くも殺しておる。病気に罹った奴らを含むと更に多くなる。儂は奴を決して許さぬ」

声を震わせながら、憤怒に満ちた声で言った。

鼻の穴から紅蓮の炎が吹き出る。


炎は四方八方に地面を這った。


サラマンダーの体から、ニャーレちゃんに劣らないくらいの膨大な魔力を感じ取ることが出来た。


背中に氷が伝うような冷たさをかんじる。

手汗をかいた手を握りしめ、胸に置く。


彼は、首を振って怒りをなんとか自制させて、

「奴は、儂の炎を呑み込みやがったのだ。最も恐ろしいのは周りの木々を腐敗させ、自分の中に取り込ん仲間を骨にしてしまうことだ。取り込んだ肉体や魔力はそのまま奴の栄養源となっているようだ。これほど手強いスライムと戦った事など、1000年生きている儂でも無い。正直、どうすればいいのか分からぬ。食ったら腹を壊しそうだしな」

「ふむ。なるほどな」

顎に手を当てて考えるニャーレちゃん。


「それでは、弱点などは分からぬという事だな」

「ああ。そういう事だ。普通のスライムの方法で倒せる方法は全てやった」

「ちなみに、そのダークスライムの上に立つ魔王とは誰か分かるか? 何か分かるかもしれない」


「ドルギモーア。奴は、そう言っていた。儂は1000年近く生きているが、そいつの名を聞くのはここ200年くらいだ。どうやらこの世を支配するという話は聞いてはいるのだが、どうも情報が少なくてな」


「いや、その情報だけで十分だ」

「何か分かったの? ニャーレちゃん」

彼女はニヤリと薄笑いを浮かべながら、

「妾も魔王の1人だからな。この世界を支配したいという想いはある。恐らく奴は手始めにこの島を支配して、ドラゴンを手懐ける事が出来れば、自身の野望に大きく近づくと考えたのだろうな」

「儂らを利用しようとしているわけか。200 年程度生きている分際で小賢しい。潰してくれるわ!」

怒りに燃えるサラマンダー。


もう、怒りで彼の心が噴火しているのが丸わかりだ。

でも、私たちが手に入れた情報は、普通のスライムの倒し方ではダークスライムは倒せないという事だけ。

倒し方が分かった所か、寧ろ分からない方向に進んでいる。


まるで、行き止まりの道に自ら突っ込んでいっている感じだ。

「何か打つ手はあるの?」

試しにニャーレちゃんに聞いてみた。


「そうだな。正当法で倒せないというのなら、封印術で封じるしかないな。それも、魔王の直属の手下となるとかなり強力な封印術が必要になってくるな。これを使うか」

そう言って、ニャーレちゃんは懐から透明なクリスタルを取り出した。


「これはなに?」

「これは、魔物を封印する術式を組み込んであるオリハルコンだ。これを敵の体内に放り込めば自動的に封印術が作動する仕組みになっている。これならいけるかもしれない」

「うむ。ありだな。その方法を試してみるか」

サラマンダーはニャーレちゃんの意見に頷く。


確かに、これなら勝機はある。

「そうだね。問題は、どうやってダークスライムの体内にこれを入れるかだけど——」

「それに関しては妾に良いアイデアがある。2人共耳を貸してくれ」

私とサラマンダーはニャーレちゃんの作戦を聞いてみることにした。


ニャーレちゃんの作戦はかなり大胆だけれど、合理的なものだった。

「なるほど。それならいけるかもしれないな」

「出来る! ニャーレちゃんいけるよそれ!」

「よし。決まりだな。それでは、この作戦でいこう」


私達は、ダークスライムがいるという森へと向かうことにした。

サラマンダーの背中に乗せてもらって。

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