第8話 交渉と魔王
ニャーレちゃんは、今にもサラマンダーを襲いそな勢いで睨みつけていた。
だけど、ここは懐の大きい魔王——
ニャーレちゃんのこと。
きっと、サラマンダーを許して————
「き、貴様。妾を侮辱したな。見下したな。ゆ、ゆ、ゆ、許さんぞ」
許してなかったー!
全然許して無かったー!
拳とか握りしめちゃってるし。
歯ぎしりとかしちゃってるし。
ニャーレちゃん思いっきりサラマンダーを睨みつけちゃってるよ。
どうするのこの状況!?
「魔王の私を恥辱した恨み、簡単に晴らせると思うな。貴様らの弱点を妾は知っているんだぞ!」
ひゃぁ、本気で怒ってるよ。
マジだよ。
本気マジだよ。
なんか、ニャーレちゃんから黒いオーラとか出てるんだけど。
こんな私でもとてつもなく禍々しくて膨大な魔力量って分かるんだけど。
私の心は嵐よりも吹き荒れ、荒波を立てていた。
それはもう、ノアの箱船の時の大行水並みに。
それだというのにサラマンダーは澄ました顔でニャーレちゃんと対峙している。
流石というべきなの?
ドラゴンの王ともなるとやっぱり貫禄が違う(のかな?)。
サラマンダーは、落ち着いた態度で。
だが、にやにやしながら口を開く。
「ふははは。儂等の弱点というと勇者か? 残念だったな小さき魔王よ。貴様も強いが、勇者も強い。貴様は勇者よりも強いかもしらんがこの世に勇者などおらぬ。故に、この世界の最強は儂1人・・・ってあぶなぁぁぁぁ!」
サラマンダーは、自らの顔に向けて放たれた魔力弾を、当たる直前で魔力壁マジック・バリアを作って身を守った。
見ると、ニャーレちゃんの顔は真っ赤になっていた。
「き、き、き、貴様。黙って聞いていれば小さいだの自分が世界最強だのとペラペラペラペラ言いよって。世界最強はこの妾だ。せっかく、貴様らを助け・・・じゃなくて支配しに来たのに無駄足だったな。最後にこれでも食らえ、サラマンダーよ。貴様らドラゴンの弱点は勇者のみにあらず。このポリパテの実を砕いた饅頭を食らうが良い。文字通り火を吐いて死なのだ!」
「な、なぜ貴様は儂が辛いものが嫌いだということを知っている?」
「ふん。妾の情報収集能力を舐めるのではないぞ! サラマンダー! いっけぇぇぇ!」
止めようとして、ニャーレちゃんに手を伸ばす。
が、その場には既にニャーレちゃんはいない。
上を見ると、ニャーレちゃんは宙を飛んでいた。
彼女の手に持っているのは、饅頭だった。
ニャーレちゃんはそれをサラマンダーの口に放り投げる。
サラマンダーは、決して食べてはいけないと口を閉じるが既に遅い。
というか、ベストタイミングでサラマンダーの口の中に入る。
パクリ。
その瞬間——
「か、かっらーーーーーーー! 辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い!! 辛すぎる! き、さま。盛りやがったな!」
トン、と華麗に地面に着地すると、ニャーレちゃんは微笑を浮かべて、
「そうだろう。そうだろう。なんせ、妾が作った饅頭だからな。それも、そなたらの大大大大好物の辛いものだからな。しかも、辛い食べ物の中でずば抜けて辛いとされるポリパテの実を入れてみたのだ。どうだ? 美味いだろう? 美味だろう? 惚れてしまうであろう?」
サラマンダーは、モグモグと美味しそうに口を動かしながら、
「うむ。これは確かに美味い。美味いぞ。一城の魔王よ。確かに死ぬほど美味い。もっとくれ。皆に食べさせたい。これを儂だけで独占するのはむず痒い。よし、この饅頭を皆の分用意したら話そうではないか。数は、1000だ。1000個の饅頭を用意したら話してやろう」
ニャーレちゃんは、ほっとしたように溜息を付いて微笑んだ。
「良かった。貴方はまともな王のようだ。民に気を配り、民の幸せを願い、民の為の想い、行動する。貴方なら信頼出来る。分かった。魔王族第3代目ブラッド・ファグニャーレの名にかけて誓おう」
「うむ。楽しみにしているぞ」
と、次の瞬間——
ニャーレちゃんは空間から大きな袋を取り出した。
恐らく、異空間魔法のひとつだろう。
「ほら、そう言うと思って事前に用意をしてきていたのだ。全部で2000個だ。思う存分食べるが良い!」
「ありがたい。それでは、話をした後に皆に配るとしよう。貴様、ファグニャーレと言ったな。もう分かってはいるとは思うが、この島の現状は非常に危うい」
サラマンダーは急に深刻な顔をして話し始めた。
その顔は、は1人の王としてこの島を治めるものとしての顔だった。
「実はな、もう1人の魔王の配下であるダークスライムがこの島におるのだ」
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