第6話 ドラゴンの島
「ここはどこ?」
目を覚ますと、私がいたのは鬱蒼と茂った森の内部だった。
鳥の囀りやその他の動物の奇声が聞こえる。
隣にはニャーレちゃん立っていた。
「行くぞ。取り敢えずリザードマンの集落まで行って話を聞かないことにはどうすることも出来んからな」
「ま、待ってよ。ここはどこなの? それに、なんで私達いきなりこんなところにいるの?」
質問を私が投げかけているのに、ニャーレちゃんは私の事を置いてけぼりにして先に先にと獣道を歩いて行く。
「ちょっと、置いて行かないでよニャーレちゃん」
ニャーレちゃんの後を付いていく。
「ここはドラゴンしか生息しない島なんだ」
ニャーレちゃんは歩きながらこの島の事のついて説明し始めた。
「名はドラゴ島。竜が生息しているとさっき言ったが、厳密に言うとこの島にはドラゴンとリザードマンの2種類の生物が生息しているんだ――――」
ニャーレちゃんの話によると、この島は独自の進化を遂げてきた島で外から人が来ることは殆ど無いし、わざわざこの島に来るような珍客もいない。
どうやら、ニャーレちゃんの話からするとこのドラゴ島にはリザードマンの集落があるらしく、リザードマンから進化するとドラゴンになるらしい。
また、リザードマンはドラゴンを神聖視しているらしく、ドラゴン教とも言うべきある一つの信教がその集落には存在しているが、なぜリザードマンがドラゴンを信仰しているのかは分っていないらしい。
なので、今回はそれを解明すると共に、最近起こっている奇妙な異変について調べるつもりらしい。
最近この島で起っている奇妙な出来事――――。
それは、この島の生態系が崩れかけているということだ。ドラゴンとリザードマン以外にもこの島には沢山の生物が生息している。
鳥や虫、獣、魚等々。中にはこの島にしか住まない特殊な生態を持っている生物も存在しており、かなり貴重で生態学的にもかなり価値があるのだそうだ。
しかし、それらの生き物たちが何故か巨大化かつ凶暴化しているらしいのだが、その原因は不明でこのままではこの島の生態系が滅茶苦茶になってしまう。
だから、それを何とか止めないといけない。
という事らしい。
なんか、私が想像している魔王像と違う。
魔王って言うと、もっと何か壊したり破壊したりって言うイメージがあったんだけど。
「この先にリザードマンが住んでいる集落がある。まずはそこに行って情報収集をする。良いな」
「分かったよ。でも、いきなり行ったら襲われたりしないのかな?」
「安心しろ。妾が傍にいる限り君は怪我をしない。私が何とかする」
か、カッコイイ。
私、男の人にもそんな事を言われたことないのに。
女の子から言われたらきゅんきゅんしちゃうよ。
「ニャーレちゃん。私の事をそんなに大切に想ってくれていたなんて。私嬉しすぎて昇天しちゃいそうだよ!」
ニャーレちゃんに抱きつこうとしたら、するりと躱された。
「リザードマンは仲間意識がとても強い。この島が孤立していて誰も来ないということもその原因の一因なのかもしれないが、排他的なんだ。外から来る奴らを拒絶する。行き過ぎた帰属意識だな」
「それじゃ、どうするの? 私達リザードマンの所に行けられないよ」
「リザードマンの姿になれば良いのだよ。行くぞ」
ニャーレちゃんはそう言うと、ブツブツと呪文を唱え始めた。
すると、ニャーレちゃんの体が白い衣に包まれて、その形が変化した。
「うむ。中々よく出来た感じだな。我ながら上出来だ」
ニャーレちゃんはリザードマンの姿に変化していた。
焦げたように黒い肌に、厚く凹凸のある皮に包まれた体。地面に着くくらいの長さの尻尾を持っている。もちろん、翼は無い。
「変身術。始めて行ったが良い感じだ。君もするぞ」
「う、うん」
ニャーレちゃんの人差し指が私の額に触れる。すると、体の中が動いているような感覚がする。スライムに触っているようなそんな不思議な感覚。
「うむ。もう良いぞ」
拳を握ってみる。
硬くて凸凹する皮膚の感覚。爪はナイフのように鋭い形をしている。
体を触ったり、見たりする。
緑色の肌に鋭い爪が生えた足。
口の中の感覚も随分と違う。
舌で口の中を確かめる。エルフの時には無かった鋭い歯が口の周りにずらりと並んでいるのが分かる。
正直、驚いた。
ここまで再現度が高いなんて思ってもみなかった。
「す、凄い」
「だろ? 変身術は術者の技量によってかなり左右されるからな。ま、妾は魔王だからな。このくらい出来て当然なのだ」
自慢気に胸を張ってみせるニャーレちゃん。
変身術は私は全然知らないけど、ここまで出来るのは結構凄いんじゃないかと思う。
「よし。準備も出来た事だしリザードマンの所に行くか」
「うん」
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