第4話 魔王嬢のお城の大掃除
「うーん。どうなんだろ? ねぇ、ニャーレちゃん。この服どう思う?」
「どう思うも何も、それ全部私の服なのだがな・・・・・・・」
鏡を見てどの服が良いのか迷っちゃう。ていうか、ゴスロリドレスものが多い。全部ニャーレちゃんが着ている物だからなぁ。銀髪で色白なニャーレちゃんには似合うんだと思うけど、私のような金髪の髪には全然似合わないかなぁ。
「エリア、君はこっちの服の方が似合うんじゃないのか?」
ニャーレちゃんがクローゼットから出してきたのはメイド服だった。
「な、何でメイド服なんて持っているのよ」
「メイド服だけじゃないぞ。他にも、コルセットやファージンゲール、ローブ、コット、ヴァトーブリーツ、バ二エ、ストマッカーとか色々あるぞ」
それ、全部中世ヨーロッパの服に使うものじゃない。結局、メイド服以外にはドレスしかないのね。多分、彼女の事だしゴシック色の強い服しか着ないのかなそう言えば、ニャーレちゃんが白と黒の服以外の色を着ているところを見たこと無いかも。
「ねぇ、ニャーレちゃん」
「ん? なんだ?」
「ニャーレちゃんって、何で白黒の服しか着ないの?」
「そんなの好きだからに決まっているだろう」
「す・・・好きっ!?」
ま、まさか。ニャーレちゃんって私の事が好きなのかな。
「い、いや・・・・。妾はドレスが好きって言ったんだが。何故君が照れる?」
「え・・・・・・?」
あれ? そうなの? 私ったらてっきり――――。
「な、何でも無いわよ。ほら、さっさと着替えて掃除をしに行くわよ」
「なぜいきなり怒る? 訳の分からない奴だな君は」
「ふ、ふんだっ」
ニャーレちゃんからメイド服をぶん取って着替えた。
「まずは、どこから掃除しようかしら?」
「そうだな。妾が一番多く使う所は図書館と実験室だからそこを先に掃除しようか」
ニャーレちゃんはいつも通りゴスロリのドレス。対して、私はメイド服を着ていた。
「どうかなぁ? ニャーレちゃん。私のメイド服似合う?」
「まぁ、似合ってるんじゃないのか? 君は綺麗な金髪の髪をしているからな。妾は良いと思うぞ」
「もうっ、そんなに褒められると照れちゃうよ」
右手でニャーレちゃんの体を叩く。
「君は、褒めると調子に乗るタイプっぽいから今度からはなるべく褒めないようにしよう」
「えっ!? なんでよ。ニャーレちゃんの意地悪!!」
ぎゅっと、ニャーレちゃんに近付いて抱きつく。
「な!? こら、ベタベタするな。離れるんだ。暑苦しいぞ君」
「だって、ニャーレちゃんの生肌がお人形さんみたいに柔らかいから」
ニャーレちゃんの体からお花畑のような甘い匂いがしてくる。ピンク色のほんのりと甘くて、優しい匂い。心が蕩けてしまいそう。
「ほら、さっさと掃除を終わらせるぞ。私は忙しいんだ」
ニャーレちゃんが私の腕を振り解く。
「ああっ、もう。もうちょっと触らせて貰っても良かったのに」
そんな私の話も聞かずにニャーレちゃんはスタスタと先を歩いて行く。
図書館の扉の前まで行くと扉に掌を合わせる。すると、扉がゆっくりと開き始めた。
「す、凄い・・・・・・」
「さぁ、掃除をするぞ。モップは奥の部屋にあったはずだ」
「私は使う必要は無いわ」
私はニャーレちゃんに胸を張って見せた。
「なぜだ? 掃除するには道具が必要だろう」
「私を誰だと思っているの? ニャーレちゃん。エルフ族よ。弓と風魔法の使い手なのよ」
ニャーレちゃんは目を見開いて、
「そうか! 風魔法でゴミを纏めるということか!」
「ご名答」
パチンと指を鳴らして見せる。
「それじゃ、大掃除を始めるわよ!」
「おお!」
私は風魔法でゴミ集め。ニャーレちゃんはモップや雑巾で床を磨いた。実験室でもこの役割でやったけど、一つ分かったことがある。ニャーレちゃんはおっちょこちょいだってこと。
「ちょっと、うわぁ」
あ、まただ。これで何回目なんだろう。ニャーレちゃんに床掃除はやらせるべきでは無いのかも。でも、それだと、ゴミを集める人がいなくなるし。
「ちょっと、ニャーレちゃん大丈夫? さっきからスッ転んでばっかじゃない」
ニャーレちゃんはほっぺたを栗鼠みたいに膨らまして、
「そ、そんな事無いぞ。少し、足を滑らせただけだ」
いや、今のを合せたら合計5回転んでいるんですけど。あなた。
「き、気を付けてね」
「ふん。君に心配される事など無い」
彼女はそっぽを向いて再び床を拭き始めた。
掃除が終わって、ニャーレちゃんの部屋に戻ると、あることに気が付いた。
「ちょっと、ニャーレちゃん。足怪我してるじゃない。治してあげるからベットに座って」
彼女は心配する私の言葉を無視して、
「ふん。この程度の怪我私はなんともないぞ。平気だ。放っておいてくれ」
胸の中がむかむかして、
「いいから! 何かの感染症にでも罹ったらどうするつもりなの?」
「妾は魔王族だぞ。感染症如きに罹るような柔な体をしていない。人間と一緒にしないでくれたまえ。実質、妾は今までの人生の中で病といった類のものに罹った事が無いのだ。だから、君が心配するようなことは何一つとして無いのだよ」
そう言って、ニャーレちゃんは私の言うことを無視してベッドの上で本を読み始める。
「駄目だよ!」
彼女の肩に両手を乗せて説得させようと試みる。
「そりゃ、魔王族と人間じゃ、体の丈夫さは大分違うと思うけど、今まで病気に罹らなかったからってこれからも罹らないっていう保証は無いんだよ。出来るだけ病気のリスクは低くなるように日頃の行動には気を付けないと。自分の体なんだから。ニャーレちゃんがいなくなったら私はこれからどうすればいいの?健康に気を付けるっていうことは、自分の体を大切にするっていうことなんだよ。それに、自分の体を大切にするっていうことは他の人を大切にすることくらい大切な事なんだから。ニャーレちゃんはもっと自分の体を大切にして!」
私は胸に溜まったものを吐き出すかのように一気に話した。彼女は、ポカンとしたまま私の方を見て、
「君が妾をそんな風に見ていたなんて思ってもみなかった。済まない」
彼女は頭を垂らして私に謝ってきた。驚いた。プライドの高いニャーレちゃんの事だから、また何か言い返してくるのかと思ったのに意外と素直に謝ってくるなんて。ちょっと、言い過ぎたかも。
「私の方こそごめん。言い過ぎたわ」
そう言いながら、メイド服のポケットの中から一つの袋を取り出す。
「ニャーレちゃん。なんかの器と木の実とかを潰す物無い?」
「それなら、調理室にあったぞ」
「ありがとう」
調理室から器と手頃の石があったから、洗って器の中に袋の中から木の実を取り出す。木苺みたいに赤くて、小さなプツプツの膨らみがある木の実だ。これを磨り潰して怪我をしているところに貼ると怪我が速く治るんだよね。
磨り潰した物をニャーレちゃんの所まで持って行く。
「はい。ニャーレちゃん。ちょっと染みるけど我慢してね」
「んっっ」
薬を塗っている間、彼女は目を潰っていた。我慢したご褒美に頭を撫でてやると、
「触るなっ!!」
って怒られちゃった。目が赤くなっているけど。
こんな、ほんのりと甘い日常が続いてくれたら良いなって私は思う。
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