無能勇者の烙印
八月の夏季
第1話 プロローグ
──巫山戯るな!
自らの蒔いた種。
その責任を赤の他人に押し付けておいてこの仕打ちはなんだ。
そのような恨み言を内心舌打ち混じりに吐いている間にも我が身に打撲傷や裂傷がとどまる事無く増え続けている。
俺は襲撃がある中、不規則に息を乱しながら霧の掛かった暗い森をひたすらに走り続けた。
▼
世界で最も弱いとされている最弱の魔物『レッドスライム』の姿を模して作られた烙印。
──無能の烙印。
丸い円の中に赤を塗っただけのその烙印には計り知れないほどの侮蔑の意味が込められていた。
その烙印はある程度でも地位があり、その上で力の無い者──つまりは貴族以上の身分で魔術適性が無い者にのみ与えられる烙印である。
この国の人間は魔術士至上主義らしい。
そんな訳で貴族の親は魔術適性が無いと判明したら実子でも簡単に切り捨てる──無能と罵りながら。
この国は腐り切っている。
そして──その烙印は俺にも刻まれた。
鑑定審査の結果他の二人と違い、俺には魔術の適性が全くと言っていいほど無かった。
その上、ステータスに記載されている情報が村に住む一般人と遜色が無いレベル──二人と俺は盛大に比較された。
俺の身分は貴族では断じて無いが、烙印を刻まれるという事はそれだけの地位があるという事になる。
異界から召喚された『勇者』には──
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