第3話秘密と契約

ドアを開けると、堤下は机の上に置いてあるパソコンを素早くたたみ、焦ったように帰る支度をしている。


「あ、あなたはどうしてこちらに居るのかしら?」

俺は自分の席に戻りながら

「別に。ちょっと先生に呼び出されただけだよ。」

何を気にしてるだろうと思いながらも気にしないようにしながら俺も帰る支度をしていた。


すると堤下は帰る支度が終わったのか、俺の席に近づいてくると、


「今日私がここにいたことは誰にも言わないでよね、佐々木悠馬くん。」


「俺の名前知ってたのか。そもそも俺には言いふらす友達なんていないから心配すんな。」


俺には人気者が放課後に一人で何をしようが関係の無いことだったから本心からそう答えた。


と言っても、俺は堤下が何をしていたのかは少し気になってはいたのは確かだった。

まー気になってもなんもないだろうが・・・

そういうことを考えながら俺は帰る支度を終え、自分の席を立った。


「ん?この紙は・・・

確かこの席はさっき堤下がいた席だよな。」


そう言って堤下の席の下にある紙を拾ってみると、それは何かの原稿用紙のように見えた。

原稿用紙には、何やら物語のようなものが書かれていた。

しかも、その物語の中には「混沌」とか「暗黒」などと俺が見てもわかるくらい痛々しい用語が並べられていた。


「おいおい、まさかこれって堤下の書いた物なのか?何もかもが痛いな。」


おれは、ちょっと気になったのでその原稿を持って帰ることにした。




その夜、おれは今日持って帰った1枚の原稿に目を通した。この原稿は所謂、中二病と言われる人が書く物語だろうと察しがついた。

おれはあまりアニメなどの類の知識があるわけではなかったためこの物語の面白さが少し分からなかった。


と言ってもこれは堤下に返すしかないみたいだし、どうしたものかな・・・

おれはいつも独りだから堤下を呼び出すと言ってもどうやって呼び出すかを寝るまでに考えていた。



次の日、結局どうやって呼び出すか考えもまとまらないままいつもの様に学校へと向かった。


「やっぱり、素直に呼び出す方がいいかもしれないな。でもそうなると・・・」


「お兄ちゃん何をそんなに考えてるの?は!もしかしてきょうこそは友達を作る決心を付けてるのかな?」


「んなわけないだろ。昨日落し物を拾ったんだが、それが多分誰にも見られたくないものだとおもうんだよ。だから呼び出して渡そうと思うけど、俺に呼び出されたら素直にくるのかなって思って。」


なんで俺は沙織にこんな事話してるんだろうと思いながらさおりの答えを待っていると、


「あー、お兄ちゃんに呼び出しされるのはたしかに嫌かも。でもそんなのやって見なきゃわかんないって!」


こいつ今、嫌って本心でいいやがったな。


「結局やって見なきゃわかんないだよな。よし、お兄ちゃん頑張ってみようじゃないか」


「もしかしたら仲良くなれるかもよ?」


「そんな期待はしないことだな。」


俺はドヤ顔で答え、その後はいつも通り登校を続けた。


俺は教室に着くと直ぐに堤下が来ているかを確認すると、堤下は既に席に着いていた。


しかし、周りには女子の友達がいるため俺には割って入れるようには思えなかった。


「なんであんなに人が集まってんだよ。人気者に声かけるのって本当はめちゃくちゃ難しい事なんじゃ・・・」


いちいち考えてしまう俺も言い訳してるようで情けないように思った。


どうやって話しかけようか堤下の方を見ながら考えていたら、堤下は俺の視線に気づいたのか俺の方に視線を向けた。


「あっぶね、俺が見てたのがバレると周りのヤツに変な目で見ていたと思われかねない。」と堤下とは反対の方へと視線を逸らした。すると、


「佐々木悠馬くん。ちょっといいかしら?」


誰かに呼ばれたためにそちらへと視線を向けるとそこには堤下がいた。何か言いたそうにしながらいたため、


「ああ、おれも渡すものがあったからな。」


そう言うと、堤下も察したように俺の手を引いて教室を出た。


教室をでると、今は使われていない教室へと行くと、


「で、佐々木悠馬くんは私にわたすものがあるっていったわよね?」


「おう、これ・・・」


渡そうとおもい原稿用紙を出したら、一瞬で奪い取るように受け取った。


「もしかして読んだの?」


「まー流れで。でも、大丈夫だ。見た事は誰にも離さないよ。」


「ほんと?誰にも言ったりしない?」


「ほんとほんと。だから安心しろよ」


「ありがとう。それで、読んだ感想を・・・教えて欲しいの・・・。」


「そうだな。お前って結構痛い所があるんだな。厨二病ってやつなのか?」


と言うと堤下は顔を真っ赤にして下を向いてしまった。


「ま、まあ、俺はそういうのに疎いから分からんがな」


「じゃあ、手伝って。」


「えっ、、、なにを?」


「私が本を書くの手伝ってって言ってるの!」


俺は唖然とした。なんで俺にそんなことを頼む?確かに俺が彼女の小説を見たのは確かだが、それでなんで俺が手伝わなきゃいけないんだ?


「なんでおれが・・・」


「断ったら、悠馬くんが私に告白してきたって嘘を言いふらすわよ」


「な・・・なんで!?きたないぞ!」


「言われたくないなら手伝うしかないのよ。

じゃあ、手伝ってね!よろしくね、悠馬くん。」


堤下は満足気に笑いながら右手を出てきた。


「はぁ・・・分かったよ。」


こうして俺は堤下と秘密の契約を交わしたのだった。

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ぼっちの俺に彼女なんてできない ちりぽんぬ @tikama

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