第13話 赤宮家2
「本当に立派な神社ですね」
京都らしさ全開の光景に思わず感嘆のため息が漏れた。数分前までボロくて廃業寸前の神社だろうと想像していたので、そのあまりのギャップに気分が高揚している。
「ここに到るまでの竹やぶも砂利の道も、京都って感じがしてとても良いなと思いました」
「ありがとうございます。日下部様に気に入られたのであれば、赤宮家としても喜ばしいことでしょう」
「おばあさんは赤宮さんではないんですか?」
「私は赤宮の分家にあたる者でございます。この神社の管理を任されております」
今のところ、他に人の気配はない。おばあさんがたった1人でこの広い神社を管理しているのだろうか。掃除をするだけでも丸一日はかかりそうだけれど・・・。
「赤宮さんの方はご両親共にいらっしゃるのでしょうか」
「いえ、それが実は少々込み入った問題がございまして。赤宮家当主にあたる旦那様は現在この京都を離れております」
赤宮家の当主、旦那様。要するに許嫁のお父さん。まさかの不在。
そうするとお父さん不在での挨拶になるのだろうか。
・・・ラッキーだ。ぶっちゃけ相手方の父親に会うのが一番憂鬱だった。許嫁本人にすらまだ会っていないのにそちらと同時のタイミングで未来のお義父さんに会うなんて気まずすぎる。もしも許嫁の女の子が全然対応じゃなかったら反応に困るし。
「すると、お母さんがいらっしゃるということですね」
「奥様は3年前にご逝去されております」
「えっ」
ということは、つまり・・・。
今回ぼくが出会えるのは、許嫁の本人である赤宮一花だけということか。
(やったぜ)
挨拶という名目的には正直これで良いのか微妙な気もするけれど、ぼく個人としては最も良い状況に思えた。許嫁といっても(たぶん)結婚が確定しているわけじゃないし、だったらまずは本人同士の所感が重要視されるべきだろう。まずは赤宮一花と会う、それが最善に違いない。
吹き抜けの廊下を歩き続けると、やがて襖が見えてきた。おばあさんはその部屋の中へとぼくを通してくれた。そこは茶の間、荘厳な作りの畳の部屋だ。客室であろうことがすぐに分かった。
部屋の真ん中には漆色の美しいテーブルが置かれていて、高級そうな分厚い座布団がそれを囲むように置かれている。
「お好きなところにお掛けになってお待ち下さい。ただいまお茶をご用意致します」
おばあさんはそう言うと、ぺこりと一礼してから襖を閉めた。
大きな神社の美しい和室に通され、これまでに類を見ないほどの懇切丁寧なおもてなしを受け、高校生のぼくは完全に気分が舞い上がっていた。すごいぞ、京都。すごいぞ、赤宮家。
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