第2話最初にキャッチしたものは男のロマンだった?!
高校生はじめての登校日。僕青島卓は、期待に胸を膨らませつつ息を切らして登校ルートを走っていた。
うん?朝から寝坊しちゃいけないよって?大丈夫、今日の朝は午前6時にきちんと起床してたから、寝坊したわけじゃないんだ。
じゃあ、準備に時間がかかったとか?いやいや、僕はこの日のために持ち物を全部昨日までに揃えていたから、朝の準備をプラスしても午前7時には準備万端だったんだよ。だから、そのまま行けば学校には15分ほどで着いてる計算になるから、遅刻をしないどころか朝練する部員さえ出し抜く勢いだったのさ。
でも、今時計の針は午前8時15分を指している。ぶっちゃけ学校の始業時間に間に合うかギリギリの時間だ。この空白の時間何をしていたのか?
その答えは、「食パンを咥えた美少女と角で鉢合わせするタイミングを図っていた」だ。
いや引かないでもらいたい。カムバック!寒くなんかないよ!皆も1度は夢見たことあるんじゃないかな?そういうラブコメ展開。多くのラノベとかのはじまりってのは、高校生になったばかりの主人公がひょんなことから美少女ヒロインと出会って恋に発展してゆく。
だから、その展開を現実にするため、僕は実践に移したわけ。でも、悲しいかな。実際に角を曲がろうとしたら狂暴な犬に鉢合わせて追いかけ回されるわ、モヒカンの怖いお兄さんにぶつかってメンチをきられるわで、ラブコメ的収穫はてんでない。
いよいよホームルーム開始時間ギリギリになったんで、仕方なく学校までの道のりを走っている途中。ただ、目的地まではあと3つ角があるから、もしかしたら?って思ってわくわくしながら走っているんだ。
一つ目の角を曲がる
・・・なにも起こらない。ま、まあ、まだ二つ残ってるし?
二つ目の角を曲がる
・・・なにも起こらない。神様もニクイ演出するなぁ。
三つ目の角を曲がる
・・・なにも起こらない。どうなってんのぉぉぉ?!。
三つ目の角を曲がったところで、青春的フラグが立たなかったことに絶望する僕。その場で崩れ落ちる。ちょうど土下座しているかのようなポーズである。ああ、なんかどうでもよくなってきた。僕の青春の物語はこれでお終い。ちゃんちゃん。
そんなこと思っていると、後ろからもの凄い勢いで何かがぶつかってきて、衝撃で軽く吹っ飛ばされる。そのまま後ろ向きに地面にダイブしたため、目がチカチカする。
そこで、僕の両手に何か柔らかいものが収まっていることに気付く。いや、正確に言うと、僕の手が柔らかい何かに包まれている。気持ちいい感触だったので、つい揉んでみる。
「んくっ、やっ」
可愛らしい声が甘い吐息とともに、僕の耳をくすぐる。視界はぼんやりしたままだけど状況を理解した。どうやら女の子らしい部分を僕の両手がキャッチしちゃっているようだ。
青春ラブコメ的には美味しい展開だけど、見ず知らずの女の子にやったら冗談じゃ済まない。最悪警察沙汰だ。急いで手を離そうとするも、手が離れない。恐るべし男の本能。
「~~っこのへんたぁあいぃぃぃ!」
葛藤している僕の顔面にバッグらしきものがめり込む。そして、彼女は急いで立ち上がると、どこかに向かって走り去ってしまった。
一方、残された僕はというと、幸せを噛み締めていた。待ち望んだ恋愛フラグが立ったのを肌感じていたからである。べ、別にラッキースケベがあったからじゃないんだからなっ?
あとは、彼女が落とし物とかしてたら完璧なんだけどな~とか思いながら、ぼやけた視界で辺りを探してみると何かが落ちていた。ここまで、期待通りだとこわいものだ。鉄板はハンカチとかだけど?さてさて何が出てくるかな?
でもそれに近寄って視界がはっきりしてくると、僕の期待は見事に打ち砕かれた。
「何で魔法少女アミたんのねんどろいど?」
落ちていたのは、UFOキャッチャーの景品だった。しかもオタク丸出しのやつ。
何とも言えない気分で、ねんどろいどを見つめていると、近くの建物から音が聞こえてくる。
キンコンカンコーン、キンコンカンコーン
今始業のベルが鳴る。
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