第7話

ショウ君が学校に来た。

先生がやたらとショウ君と目を合わせるようにしている。

僕たちはちゃんと気づいている。

先生はショウ君がいじめられないように、僕たちが何もしないようにわざとショウ君を気にかけているんだ。

よりわざとらしく。誰にでもわかるように。


そんなことをしなくても誰もショウ君には話しかけないのに。

ショウ君が来なかった間に、ショウ君がいなくていい教室が出来ていた。

僕たちは簡単に他人の存在を消せる。

ショウ君は幽霊になってしまった。

僕はもう諦めた。


こんなときでも空気を読まないのが桃子だ。

ひとりで座っているショウ君の近くに行くと、おはようと笑顔で言う。

そうした桃子を馬鹿だなと思う僕はきっと壊れてしまったんだね。


ショウ君は笑わない。

桃子に話しかけられても、おどおどとするだけだ。

桃子もやめておけばいいのに。

ショウ君は困っている。

ああ、でも僕の考えるショウ君の思っていることなんて『間違っている』んだよね。

ショウ君は困ってないのかな。

おどおどとしていて警戒しているように見えるけど、そんなこともないのかな。

まぁ、どうでもいいや。


教室で孤立している桃子と誰にも見えない幽霊のショウ君。

一緒にいるのがふさわしいよね。

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