第6話

一週間が経った。

ショウ君はまだ学校に来ない。

桃子に話しかける子はもう、クラスにはいない。ダイキ君は桃子を「ギゼコ」と呼び、普通に桃子と呼ぶ子を仲間はずれにした。

クラスのほとんどは、桃子に関わることをやめた。ただ、静かに見ているだけだ。


僕は、、、僕はダイキ君の『特別』になった。桃子に対して言った言葉を、ダイキ君は気に入ったらしい。

僕はダイキ君の後ろについて、桃子をはやしたてるばかりになった。

別にそうしたかったわけではないけれど、いつのまにか、こうなってしまっていた。


僕はずっと、ずっと正義を大切にしてきた。

ショウ君のことだって、僕が信じる正義を実行しただけだった。

それが正義と正反対の悪だったなんて、僕には思えない。

だけど、今僕がやっていることは、やっぱり悪だと思う。わかっているのにやめないなんて、僕は、どうしちゃったのかな。


もちろん、ダイキ君に一度言ってみたんだ。桃子をギゼコと呼ぶのはやめない?って。

でも、ダイキ君の目がとても怖くなって、何言ってるんだよ。お前だって楽しんでいるんだろ。今さら何をやめるんだ。と言われたとき、僕は思ってしまったんだ。

僕はこの人には逆らえない。

ショウ君もこんな気持ちだったのかな。


物事にはいろいろな側面がある。

僕に見える範囲だけで何が正義かを決めるなんておこがましいことだ。

僕はそう思い直して、何が正義かを考えることを諦めた。


わかってるよ。

結局僕は、自分の保身ばかり考えている、弱虫だったってことだろう。

正義が大切なんて結局嘘だったんだ。

正義の存在すら、僕はもう信じられない。

桃子に一言、「ごめんね。」と謝りたい。でも、ダイキ君には逆らえない。


僕は最近、帰るときにブランコに乗る。

高く、もっと高くこいだら、全部忘れて、リセットできるのかな。

それとも空を飛んで、知っている人なんて一人もいない世界に行けるのかな。

ブランコは揺れるばかりで、僕は飛べなんかしなかった。


重たい頭を抱えて、今日も僕は帰る。

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