墓のない死 後段はありません

 いやになってしまった。

 本当に嫌になってしまったのだ。もう、ぜんぜん、少しもこのことについて書きたくない。


 なにが嫌なのが分からないけれど、本当にものすごく嫌だ。物を書きたくないと思ったのは生まれて初めてである。書けないことはものすごく頻繁にあるけど、書きたくないと思ったのは産まれて初めてなのではないか。


 けれど書き始めたものを書かずに捨てるのは精神衛生上よろしくないし、前段を読んでくれている人にも失礼なので、どうして書くのが嫌なのが考えつつ、とりあえず書くはずだったものを説明しようかと思う。


 今、朝の電車の中でこれを書きながら胃のぐるぐるいう音を聞いている。

 胃の中に獣がいるのだ。

 そうだね、書きたくないね。早く終わらせようね。となだめながら多汗による手足の冷えに耐え、そもそもバイトに全然行きたくなく、つまり、だから、このエッセイ(エッセイか?)が死ぬほど面白くなくても許してほしい、ということを私は伝えたい。


 ツイッターで繋がっている人はご存知かもしれないが、私にはもう、本当にみんなに伝えたいことがたくさんあるのだ。

 だからこのエッセイ(エッセイかな?)も投稿しない間に書きたいことが5、6個あって、でもこれ終わってないしと思って書かないでいたら、なんか時間だけがズンドコ過ぎて今これを書いているうちにこのセンテンスで何を伝えようとしていたのか忘れてしまった。


 小説を書くときには基本的にほとんどなにも考えてないのだけれど、エッセイ(エッセイってなんだろう)を書くときには実はめちゃくちゃ考えて書いているわけで、しかし今書いているこれは全く何も考えず、文調もめちゃくちゃだし、なんかもうぐっちゃぐちゃだけど、このままいこうと思う。


 つまり、いくら本当のことを書いても、書かれた時点で虚構は挟まってしまうわけで、書きたくないのはそれが原因なのじゃないだろうか、と思ったのである。



 この改行の間に実はバイトの前半を終え、今私は休憩室で甘い豆を食べているわけだが、振り返って今までの文章を読んでみて改めて「なんじゃこりゃ?」と思った次第である。

 つまり本当に包み隠さず書き続けようとすると、どうやっても「なんじゃこりゃ?」という文章になってしまうわけで、えーと、また何を言おうとしたのか忘れてしまった。今日頭わるいなー。


 菓子折りを持っている営業さんがすぐそこにいるけど、休憩の間に私の元にその菓子折りは届くだろうか。



 菓子折りは食べられないまま休憩が終わり、今バイトが終わって駅前の喫煙所にいる。透明の壁に囲まれてはいるが、線路沿いの風のよく吹く場所なのでとても寒い。

 ちなみに今日はやばめのお客さんが多く頭が更に死んじゃったので、煙草を咥えてないのに火をつけて「あれ?つかないな」ということを今やっていた。とても悲しい。

 あとマフラーをバイト先に忘れてきたので、今日は首から死んでいくことになるだろう。


 つまり――そう、書くということは多かれ少なかれ「作り」の部分があるのだということを言いたいのである。


 どんなノンフィクションにもフィクションが入っているのは当たり前で、そりゃ起こった出来事を起こったまま描写したてもさして面白くもなんでもないし書く意味もないわけだからそれでよいのだけれど、その虚構レベルは素材によって変えるべきなのだ。


 私は自分の伯母が死んでしまったという事実を書くことで「作って」しまったことがとても嫌なのだろう。たぶん。

 前段の田舎に帰る冒頭から始まり、思い出を語りつつ、葬式に現れた「孫」に対する驚きを提示する、という筋がもう嫌だ。なんだか嘘っぽい。


 せめてもう少し離れた場所から語るべきだったのだ。けれど私にはまだ離れたところから伯母の死を語ることが出来ない。

 消化できていないことを、語ることで消化するという方法を取りがちだが、人様に見せる用の文章でやると虚構レベルが極端に上がってしまうことを知った。


 前段のことは全部事実なのだけれど、なんか本当にちょっと作り過ぎてる気がして嫌だ。


 タイトルにある通り、この話のオチは叔母には墓が用意されなかったということで、後段ではそこに至る伯母の息子のあまりの「駄目息子っぷり」と、その息子の子供として生きている孫二人についてつらつらと語ろうと思っていたのである。

 しかし当然、話にオチがあるという部分も私は気に入らない。


 オチって!!!!!!


 という気持ちである。

 あとこの伯母の息子があまりにも絵に描いたようないわゆる道楽息子だという現実も、これを書けなくさせている理由だろうと思う。


 本当に一昔のドラマとかに出てきそうな典型的な駄目息子という感じで、写実的に書けば書くほど虚構度が上がってしまうのだ。

 しかも私は駄目な人間に同族好意を抱きがちなので、きっとものすごく愛らしい駄目な人間として書いてしまっただろう。

 まぁ別にそれはいいけど。


 お気づきかもしれないが、何についてどう話そうと思ってたのかもう全く分からなくなってしまった。


 そして実は私は今もう家に帰っていて、夜ご飯も済まし、お風呂に入って死んだ首を蘇生し、本来ならば小説を書いていたはずなのだけれど、頭が死んでいて書けなかったので「辛いな〜」と思いながら布団の上にいる。

 もう寝る。


 もんのすごくぐったぐたな文章を書いた自覚はあるが、どうか許してほしい。

 そして出来ることなら、私が明日の朝、脳を精製水で丸洗いしたかのようにぱっきりと目を覚まし「よく寝た〜」という言葉を吐いてから起き上がり、パンにはちみつを塗って食べ、その後ものすごく調子がよく文章が書けるように応援してほしい。


 以上。私の一日を追うお話でした。おやすみなさい。

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