ラムネ派紅茶党日記

鼠は鼠の形をしている

　たぶん３日前くらい。

　バイトが終わって頭が馬鹿になってしまったので、ニコチンを摂取しよう、と思った。

　半透明の板で長四角を作っただけの喫煙所に入ったら、先客のおじさまたちが７人くらい、同じ顔で煙草を吸っていた。

　みんな仕事で頭が悪くなっちゃったのだ。

　私も同じ顔で煙草吸うぞ！　と張り切って鞄の中に手を入れたけれど、たっぷり４５秒くらい見付からなかった。

　何度ぐるぐる手を回してもポイフルばっかり手に取ってしまうので、鞄の中を見ながら探したら良いのかな？　と思いついた。

　それで視線を鞄に移したら、目の端にねずみが映った。

　なんだろう、と思って改めて見たらねずみだった。

　毛がもすもすしてて、口の方が尖っていて、尻尾がミミズみたいで、夜だから全身真っ黒に見えた。

　あまりにもねずみのような形をしているので、もしかしたら嘘かもしれないと思って顔を近付けたら、ものすごい素早さで藪の中へ逃げていってしまった。

　がさがさがさ、と大きな音がして、逃げる後ろ姿が完全にねずみだった。

　それで、これはおじさまたちも色めき立つだろうと、一番近くにいたのでちょっと得意な気持ちになって振り返ったのに、誰もこちらを見ていなかった。

　みんなスマホを眺めて、顔を青白く光らせていた。

　こんなにねずみなのに？？？？

　と思って一番近くにいたおじさまに「ねずみでしたよね？」と言おうと思ったけれど、もしかしたらやっぱりねずみじゃなかったのかもしれないと思ったので、ポイフルをポッケに入れ直してから煙草を探して、一本吸って、頭の悪いまま帰った。