第二十回・トゥリーズ水着コンテストpart3

 だが――順番が悪かったとしか言いようがない。





 エルマは、昨日とは違う水着を着ている。





 ストラップのない、チューブトップという水着である。





 トップもアンダーもピンク色の布地で、その縁は太く黒のラインで際立たせられている。そのラインが、エルマの白い肌とコントラストになっていて、綺麗だとは思う。胸がそれなりにあるし、身体のラインにも無駄がないし。





 ……だが、腹筋が割れるほど身体が引き締まったララと、包容力の化身のように官能的な身体をしたセリアさんの後では、なんとも中途半端な、見栄えのしないスタイルと感じられてしまうのだった。





 そしてどうやら、そう感じるのは俺だけじゃないらしい。観客たちの反応も、





『あれ……?』


『あ、ああ……』





 といった戸惑ったようなもので、歓声はごもごもと口ごもったよう。





 善戦はしている。善戦はしているが……(ハーフ)エルフと人間を美しさで競わせるなんて、そりゃカワイソーな話だよな……。





 と、二人をコンテストに参加させた張本人である俺が言うかということを思ってしまっているうちに、エルマはステージを下りていった。おそらくは屈辱と怒りのために、その顔を真っ赤にしながら。





リベリオが呟くように言う。





「あんな顔をされちゃあ、もう少し気合いを入れた水着を作ってやればよかったって気にもなってくるが……俺の中の衝動パトスが燃え上がらなかったんだから仕方ねえんだよな」


「あれもアンタが作ったのか」


「ああ。『断ったら、この街にいさせられなくしてやる』って言われて、仕方なくな」





 それはなんとも穏やかじゃないお話。





「続けて二回戦!」





引っ込んだばかりのガロン爺さんが再び出てきて叫んだ。





「審査を通過したのは――この十人じゃ!」


「早いな、進行が」


「当然だ。盛り上がったこの空気をぶった切るわけにはいかねえだろ」





 確かに。それに、この強い陽射しの下、女性たちをただ待ちぼうけさせるわけにもいかないしな。





 ガロン爺さんの進行に呼ばれて出てきた十人の中には、当然ながらララとセリアさんの姿がある。





 リベリオが『勝ち上がれるかどうかは、観客たちの盛り上がりで判断される』と言っていたから、ひょっとしたらエルマは……と思ったのだが、彼女もちゃっかり勝ち上がっている。





 地元有力者の娘というアレがアレしているのかもしれない、という疑惑が自ずと湧き起こるが、こんな状況は本人としても不本意だろうし、考えないでおいてあげよう。





「トゥリーズは港町! ここで働く男たちのほとんどは航海へ出て、長いあいだ家へ帰らぬ! じゃから、家を守るのは女! ただ美しいだけでは、このトゥリーズの女にはなれぬ!」





 なんだ、急に?





 唐突にガロン爺さんが自分自身の主義を語り始めたのかと思ったが、どうやらそれは勘違いだったらしい。





 ガロン爺さんは続ける。





「きょう初めてここへ来て、このコンテストを見たという者は、これがトゥリーズに伝わる伝統的な考えであることを、まずは理解していただきたい! なぜならコンテストの二回戦は、その考えに基づいて、挑戦者たちの体力が問われる内容にするのがならわしだからじゃ!

 そして、トゥリーズ水着コンテスト・百周年という、記念すべき今大会に行われるのは――名づけて、『ドキドキ・コシツキ・スクワット対決!』じゃ!」




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皆さんお待ちかねの『ドキドキ・コシツキ・スクワット対決!』の始まりです。



2019年10月22日追記

読者の方々のアクセスから察するに、『魔に憑かれた屋敷』以降辺りからの展開を書き直した方がいいのかなと思っている今日この頃です。


これから『スキル《神層学習》―学習する最強の兜(俺)―』を読んでくださる方々(あるいは既に読まれた方々)はどう思われるでしょうか。

それについて何かご意見があれば聞かせていただけるとありがたいです。そのご意見をもし複数いただければ、それを総合的に判断して書き直し等にとりかかるかもしれません(し、現状維持を選択するかもしれません)。

よろしくお願いします。

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