第二十回・トゥリーズ水着コンテストpart2

 その引き締まった身体のライン、ココア色の肌にぴっちりと張りつく、ワンピースのハイレグ水着。





昨日、リベリオが言っていた通り、その水着の前面はヘソの下まで広く切り込まれている。





 その水着前面の合間には、ささやかな胸の谷間と、そしてその可愛らしい顔からは想像できないほど見事に割れている腹筋が見え、汗と陽射しのためにその素肌は宝石のように輝いている。





 恥ずかしいのだろう、ララは手でどうにかそれを隠そうとするようにしているが、そのせいでむしろ露出にエロスの味わいが出てしまっていた。





「リベリオさん……アンタ、まさに職人だぜ」





 腰の辺りのデザインも見事だ。股のラインはいわゆるハイレグで、切れ込みはかなりキワどい。





 骨盤の最も高い位置から下、つまり尻の横のラインは完全に露出されていて、くびれから下りてくる女性的な腰の曲線美がこれでもかと誇示されている。





 ララの身体の細さ、強さ、しなやかさ……。





 その全ての魅力をしっかりと理解した上で作られたことが解る、まさしくオーダーメイドの逸品だった。……のだが、





「……ん?」





 スキル・《狙撃》を解除して観客を見てみると、なぜだろう、やけにしんと静まり返っている。





 ララも、ステージ中央で戸惑ったように辺りを見回していた。





がしかし――それは遅れてやって来た。





ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォッッッッ!





 まるで数秒、呼吸を止められていたかのように、観客たちが遅れて歓声を上げた。





 その歓声の圧力に戸惑ったようにララはオロオロ目を泳がせて、それから負けじと声を張り上げる。





「ラ……ララですっ! よろしくお願いします!」





口の形からして、おそらくそう言ったのだろう。





だが、その声は歓声に掻き消されて、ここまでは全く届かなかった。





それくらい、ただララが出てきただけのことで、観客の盛り上がりが凄まじいことになってしまっているのだった。





空気が静まり返った時はやや驚かされたが、確かにあんな超ド級の美少女が不意に目の前に現れたら、それもやむをえない反応だろう。と、俺は静かに喜びを噛み締める。





ララは引きつったような笑みで観客に手を振って応えながら、ステージ脇へと下りていく。





「何か、特技の披露ぐらいしてもいいと思うんだがな」





もっとララを見ていたかった。そんな思いで俺が呟くと、「まあな」とリベリオは満足げに頷き、





「だが、伝統的に一回戦はこれだけだ。勝ち上がれるかどうかは、観客たちの盛り上がりで判断される。人数制限はない。ほぼ純粋にその容姿だけで観客の心を掴んだ者が二回戦へ上がり――そこで優勝者が決められる」


「二回戦は何を?」


「それは極秘事項で、開催者しか知らない。が、とりあえず、この歓声の大きさからして、彼女の勝ち上がりは間違いないな」





 ガロン爺さんが再び登壇。





「続いての挑戦者! エントリーナンバー二十八! またもエルフ族からの参加者! セリア・ネージュ・ベルナルド!」





 ダークエルフ美少女の登場という興奮が醒めやらぬうち、ステージ上でララとすれ違いながらセリアさんが姿を現す。





 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!





地鳴り――





 そう思えるような、今日一番の歓声が空気を、そして海を震わせた。





 ――スキル・《狙撃》。





俺はその中でも集中を乱すことなく、スキルを実行。セリアさんの水着姿を実質ゼロ距離で凝視する。瞬間、





「っ……!?」





 俺はそのあまりの刺激の強さに、思わず目眩を覚える。





 それは、エロスの中のエロス。





 ララの肉体が美しさというコーティングで芸術品に仕立て上げられたエロスだとすると、セリアさんの肉体はエロスの上にさらにエロスを塗りたくったような(もちろん当然、セリアさんだって美しいのだが)、つまりドがつくようなレベルのエロスだった。





輝くように真っ白な肌、ビキニから溢れ出すような、ずっしりたっぷりな胸、アンダーのビキニに微かに乗った柔らかな腰回りの肉、むっちりと肉感的な太もも。





 その身体のシルエットは、女性が見れば眉を顰めるものかもしれない。だが逆に男の目から見れば、その全てがご馳走――特上肉の大盛り詰め合わせなのだった。





 後ろにいるので解らないが、間違いなく観客たちは飢えた獣の目でセリアさんを見つめているに違いない。





 しかし、セリアさんは余裕の笑みで皆にひらひらと手を振って、





「セリアです。よろしくお願いします~」





うふふっ、とやはりいつも通りふわりと微笑んで、それだけで歓声を巻き起こしながらステージを去っていく。





 ガロン爺さんが再び現れて、しかしセリアさんの後ろ姿に目を奪われたようにニヤケ面でそちらを数秒見てから、ハッとしたように、





「で、では、次が最後の挑戦者! エントリーナンバー二十九! 最早、紹介する必要もない! 誰もが知っている『トゥリーズの真珠』! エルマ・ソルダーノ!」





 セリアさん登場の歓声を引き継ぎながら、ララの因縁の敵――エルマがその顔に悠然とした微笑を湛えて登場した。

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