第二十回・トゥリーズ水着コンテストpart1
「参加者数は……エルマに気後れしてだろう、あまり多くはないようだな」
と、俺の下でリベリオが言う。
ついさっきまでガロン爺さんが俺を被っていたのだが、「では行ってくる」と妙に神妙な顔で言いながら、どこかへ行ってしまった。
だから俺は観客たちからは少し離れたその後方、波打ち際に立っているリベリオの頭の上からステージを見守っている。(スキル・《高速裁縫》と《造形理解》を習得)
天気は快晴で、風も穏やか。これ以上ないというくらいのコンテスト日和である。
だが、これからここには嵐が吹き荒れることになるだろう。エルフの美少女姉妹が巻き起こす凄まじい嵐がな……。
フフフ……。と、主人公一行を待ち受ける悪役のような笑みを内心で漏らしていると、突然、
「静粛に! 静粛に!」
声が響いて、そして、ガロン爺さんがなぜかステージ上に姿を現した。
「ガロン爺さん……?」
「爺さんは毎年、司会をやってるんだ。――ああ、いや、前回は酒樽から落ちて背中を痛めたせいで代役をしてもらってたから、十年ぶりか」
「酒樽から?」
「ああ。女の風呂を覗こうとして、積み上げられた樽の上から落ちたらしい」
「…………」
本当にしょうもないジジイだな。……次行く時は俺がサポートしてやらないと。
「静粛に!」
ひしめき、色めき立つ観客たちの興奮が収まらず、ガロン爺さんは再び声を張り上げる。そして、ようやく少し落ち着いた瞬間を逃さずに、
「お主ら、準備はよいか!」
そう叫ぶ。と、観客たちが『応!』と手を突き上げて応える。
「声が小さいぞ! 眠っておるのか!?」
『応!』
先程よりも大きい、野太いレスポンス。
「今日がなんの日かは解っておるのだろうな!」
『応!』
「五年間、この日のために生きてきたんじゃろう!」
『応!』
「よろしい! ならば、こんなジジイから言うことは何もない! 第二十回・トゥリーズ水着コンテスト――開催じゃ!」
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォッッッッ!
地鳴りのような男たちの歓声が周囲に響き渡る。その盛り上がりも凄いが、
「なんてエネルギッシュなジジイだ……」
「確かに、アイツのエロスに対する情熱だけは俺も見習うべきだと感じている。それ以外は何ひとつ尊敬できないがな」
褒めてるのかどうなのか解らないリベリオの冷たい視線を受けながら、段上のガロン爺さんは禿頭に汗を光らせて司会をする。
「まずは、エントリーナンバーワン! 誰もが知る酒場の女神! 波打つ魅惑の黒髪! サーラ・アッカルド!」
どうやら一回戦は単なる顔見せの場であるらしい、名前を呼ばれた女性たちはステージに上がると自己紹介をして、それからすぐに次の参加者に場を譲っていく。
そして待つことしばし、
「では、エントリーナンバー二十七! なんと、この百年の歴史を持つ水着コンテストで初の、エルフ族からの参加者じゃ! ――ララ・ニュイ・ベルナルド!」
「お、やっとララか!」
待ちわびた。だがおかげで、この瞬間のための心の準備は抜かりなかった。
――スキル・《狙撃》!
瞬間、俺の目は超ズームアップでララの肢体を捉える。
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いよいよコンテストの始まりです。
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