第8話 記憶

自宅へ着くと、すぐにベッドに飛び乗った。

里親たちはいない。

夜勤だろう。


疲れがひどい。重たい身体、倦怠感。

重苦しくのしかかるストレスをベッドの上で耐えた。


ギクリとした。

老父婦と若い男性がいつのまにかこっちを見ていた。

「ルーディー、私が実の父親だ。ここにお母さんと弟のムアンもいる。みんな天国にいるんだ。お前だけ地上に戻った。私たちは神に許されて逢いに来た」

「ルーディー君。寂しかっただろう。僕たちが家族だ。ずっと見守ってるよ」

「黒田義夫さんと会えばいい。あなたの気にしていることはすべて知っている。力になってくれる。私たちもいる。また会える。きっと会える」

母が涙ながらにいうと、3人そろって徐々に消えてしまった。


気ずくと涙がとめどなくあふれていた。

思い出した。過去の記憶がよみがえってくる。


小説家を目指していたこと。数人の恋愛相手との思い出。

友人たちとの思い出。家族との生活。30才の時、志なかばで自動車事故で家族とともに死んだこと。


薄暗いアパートのただ中、朝までどうしても眠れずに烈しい孤独に耐えた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る