第61話
修学旅行から帰ったミチエは、また忙しい毎日に忙殺される。
その後、2週間ほどして泰滋から手紙が届いた。泰滋からの手紙を手にミチエの顔に自然と笑みが湧き出る。ミチエは京都で会えなかったことで、気まずくなり、もう手紙が送られてこないのではと心配していたが、また手紙が再開されたことが嬉しかったのだ。
待ち合わせ場所に行けなかった詫び。土産の礼と生まれて初めて焼きハマグリを口にした父がその味に夢中になったこと。しかし、母はそのせいで父の晩酌の量が2倍になったと嘆いていること。ほかに旅館に尋ねた時の様子も綴られていて、旅館での『忍ババ』とのやり取りのくだりは、ミチエも腹を抱えて笑った。
確かに修学旅行は楽しかったが、心残りは、泰滋と会えなかったことだ。ミチエはバスケの練習で上がらない腕に鞭を打って、ペンを握った。
京都の泰滋は、ミチエから返事がきたことに驚いた。そして、手紙を読んでさらに驚く。
『本当にすまないと感じていらっしゃるのなら、写真を送ってください。ミチエ』
頭文も、挨拶もない。欲しいものをストレートに記した、たった1行の手紙。
「えらいこっちゃ、ポートレイトかいな…」
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