第28話

「みっちゃん。着替えもしないで寝ちゃったらからだに毒だよ」

「うう…うん。わかったわよ」


 目をこすりながら半身を起こすミチエ。その膝もとに妹が手紙を投げた。


「それにまたみっちゃん宛てに手紙が来てるわよ」

「えっ、また?」

「そうよ。それに…」


 妹がミチエの机の上から2通の手紙を取り、合わせてミチエの膝もとに投げる。


「なによ。前にもらった手紙、2通とも封も開けてないじゃない」


 そう吐き捨てるように言うと、自分の机で勉強を始めた。


『そうなのよね…。これもまた厄介なのよね』


 ミチエは手紙を手に持ちながらため息をついた。

 1カ月前くらいから、文通相手から送られている手紙を読む気力が湧かない。読めば返事を書かなければならないプレッシャーが高まる。それがまた、手紙の封を開けることを躊躇させていた。


『でもへんよね…』


 ミチエは首を傾げる。1カ月前までは、どんなに間が開いても、ミチエが出した返事の後に次の手紙が来るパターンであった。しかし、返事も書かないのに1週間後に新たな1通が送られてきて、そしてその1週間後にもまた1通。だから封が開けられていない手紙が3通ミチエの手の中に溜まってしまった。


 返事も書かないのに手紙を頂くだけになってしまっては、本当に相手に申し訳ない。これでは、相手にあまりにも失礼なことだから、アオキャンにミミズ事件をばらされても、ちゃんと相手にお断りした方が良いのでは無いだろうか。ミチエは、3通の手紙を見ながら、どんなに身体がきつくても、最後の返事を書くべきだと決心した。


 あと1通書けばいいのだと思うと、多少気が楽になった。その為にもとにかく頂いた手紙は読んでおいた方が良い。ミチエは、最初に来た1通目の封を開けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る