第20話

 部屋に戻った佑樹は、またベットに寝転びながら天井を眺めた。


 再び不抜けの海に漂いながら、それでも、じいちゃんの言葉をもう一度頭の中で繰り返してみた。


『自分自身で自分に音楽を聞かせるギターってのも、いいと思わないか』


 やはり意味がわからない。しかし、どうせ時間もたっぷりあるし、やりたいこともないのだから、大好きなじいちゃんの言葉に従ってみてもいいのかもしれない。

 佑樹は起き上がると自分のパソコンを立ち上げる。そしてネットオークションのサイトに入った。


「けっこうするじゃん…」


 アコースティックギター、エレキギターを調べたのだが、オークションとは言えそれなりの値段はする。佑樹の乏しい小遣いではかなりきつい買い物になってしまう。検索ワードを『ガットギター』に変えてみた。


「うひゃー、さらに高いじゃん…」


 『ガットギター』でヒットしたページには、ほとんど名工による美術作品のようなギターが列挙され、古美術のオークションページを見ているような錯覚に陥る。こりゃあ無理だ、と諦めかけていた片隅に、3000円のギターを発見。早速商品の詳しい説明を見た。


『アンティーク 1968年製。フレット山8分程度。ネックに多少の順反りはあるものの、演奏には支障ありません。良く鳴るギターです。初心者にはぴったり』


 ギターに素人な佑樹には、書いてある意味が半分以上わからなかった。サーチエンジンで、同型ギターの検索を試みようとしたが、いかんせん商品情報が乏し過ぎる。当時の市販額などまったくわからなかった。こんな乏しい商品情報では入札する人がいるわけがない。

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