第3話 不安

どこへ行こう。

何も決めてはいなかった。

自分の計画性の無さに笑ってしまう。

とりあえず此処ではないどこかへ

行かねばならない。

券売機の前で立ち竦みそんな事を考えた。次に切符を購入する人が女性なら北へ。男性なら南へ。そう決めた

瞬間に母親と同年代ぐらいの女性が

数名大きな声をあげながらやってくると、いくらだの、どこを押すんだの

騒ぎながら切符を購入し嵐のように

ホームへと流れていった。


熟年パワーに少し恐怖を感じながらも女性だったので北へ向かう為に券売機で新幹線の切符を購入する。

時間はたっぷりあるので電車で行こう。北海道へ新幹線で行くのは初めてである。

丁度良い新幹線に空きがあり、俺はすぐに東京駅へと向かった。


平日の午前中の電車は空いていた。

小さな子供を抱いた若い女性。

杖を片手に座る男性。

なんて穏やかな時間何だろう。

みんな、幸せなんだろうか?そんな事を思い鼻の奥がツンとした。


自分はあんなにも頑張って働いてきたのに。妻にきちんと誕生日プレゼントや記念日にレストラン予約したり

花束を渡したりしてきた。

一体、何が不安だったのか?

皆目見当がつかない。

なぜ浮気されなければならなかったのか?

抱く回数が少ないからか?

仕事で疲れているせいか確かにこの

半年あまり性欲は減退していた。

そういえば最近は朝ですら勃起することがない。

自分は妻を好きではいたが、惚れてはいなかった事は事実。

責められても仕方ない事だと反省した。

好きで好きで求めても求めてもやまない相手なんていたこともない。

そう考えると浮気されて当然だったかもしれないが、やはり許せない。

はぁぁぁぁとまた大きなため息を吐き出したが、モヤモヤは収まらず分からない何がが込み上げてくるのをグッと我慢した。


スーツケースを押しながら歩くには

不便なほど人が溢れている東京駅に降り、新幹線の中で食べる物とビールを購入し、新幹線のホームへと人を避けながら歩いた。

こんなに沢山の人がいるのに自分は

何て孤独なんだろうと感じた。

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