第72話 夢の世界へと

Rito


あのReiちゃんがまさか俺の片割れだなんて


でも今は確信している


ただ夢の中で言われただけで


現実の世界ではReiちゃんとは


兄貴と会った日以来


一度も会っていないのに確信している





現実で伝えたら転生終了


だから


彼女は夢の世界を利用して


伝えてきたのだろう


一体どうやって?





あの薄暗い世界.....


あそこだ


貴宝寺だ


彼女はきっと


あの石碑に出入りしているのだろう





監視には見つかってないのか?


それとも監視は


はじめから存在しないのか?


また来るってことは


また夢に現れるのか?

 


 


あの大勢の人の中から


彼女は俺を探し出して


話しかけていたのだろうか


あの世界は夢とつながっているのか.....


久しぶりに行ってみるか





Rei


きっと今頃Ritoくんは確信してるはず


彼とは現実の世界では


河原先輩の弟さんと会った日以来


一度も会っていないけど


彼が私を認識したことは分かる





どうやって私の声が届いたのかは


分からないけど.....





久しぶりにブログを更新する


あっ、メッセージが4件も来てる


一つ一つチェックしていく


相談のメッセージばかりだ





そんな中、1件だけ全く違う内容


えっ......





Reila


あれから5日後


時刻は23時55分


彼の地域にmission mobileを設定する


今日もまた名前も知らない彼を探す





0時00分


眩しい光とともに扉が開く


時間は5分

 




「Reilaだよ、どこにいるの??」


どこだろう


こんなに人がたくさんいる


半透明の人たちをすり抜けながら


どんどん進んでいく





どれぐらい進んだか分からないところで


時計を見ると


もう0時4分


あと1分しかない


そろそろ引き返さなきゃ





相当奥まで進んじゃった


引き返しながらも目だけは


彼を見逃さないように集中する





いない





あと10秒


ダメだ、今日はもう会えない


あと少しで扉が閉まる





バタン





Haru


自動的に削除するシステムになって


手間は省けた


省けたが


なぜかモヤモヤする





彼らも俺と同じ特別転生者


俺は毎日孤独に生きてるというのに


一部の転生者は


あの世界を利用して


何かを変えようとしてる





転生終了するかもしれない


リスクを犯してまで


そんなに伝えたいことがあるのか





大人しくレベルを上げることに


集中すればいいものを


何かを変える....?


扉を何度も叩く者、現実世界に反映する





これはこのことを意味するのか


3.5次元世界は


人の潜在意識を形に現した世界ということか





何度も叩く者は


潜在意識に何度も働きかけると


現実の世界に反映される


現実の顕在意識に届くというわけか





そのために


何度も足を運んでいるのか


危険を犯してまで





そもそもこの世界と3.5次元世界を


つないだ人間は


俺と同じ性質の人間だと思っていた





もともとは自分のために作ったはず


ということは


そこまでして何かを伝えたい人が


いたというわけか





俺とは違う性質だったということか


それとも俺にもそういう部分があるのか....


深く考えるのはやめよう





Rito


久しぶりにこの場所に来る


おそらくReiちゃんはここに何度も


足を運んで


俺に伝えてくれていたんだと思う





だとすれば俺も彼女に伝えたら


届くのだろうか


彼女の夢に現れて


伝えることができるのだろうか





Rei


またあの場所に通わなければ


伝えなければ


気づいちゃったんだから


本当の関係性を





私は何度でもあそこに行く


届けたい想いがあるから


例え現実の世界で会えなくても


この世界ではあなたに会えるから


これがきっと最短距離なはず





特殊能力を生かして


誰かの役にたつこと


この世界に貢献する


そう、すべてはあなたに会うために





Reila


昨日は会えなかった


でも彼とコンタクトをとるには


あの場所に行くしかない





昨日も会えると思っていたから


一気にまた距離を引き離されたような感覚


あと5日


どうしよう


行くのやめようかな





ううん、悩んでるふり


悩んでもまた私はあそこに行く


諦めるなんてできないから





カチ カチ


彼のインスタグラムの写真を眺める


最近忙しいのかな


しばらく投稿されてない


はぁ





Haru


新作のゲームの締め切りが近づいている


ここ最近、訳の分からないことに


時間を使っていたから


仕事が進んでいなかった





あっちは自動削除にしたから


もう俺には関係ない


誰が誰を探そうと、仲良くしようと


俺には関係ないんだ


俺には.....





俺のことを探す奴なんかいるわけない


カチャカチャ


今は仕事に集中する


カチャカチャ





Rito


石碑に手を当ててみる


時刻は0時00分


中へと入る





この世界の人は


人間じゃなくて意識体だから


半透明だったわけか


そのことにReiちゃんは気づいて





ところでこんなにたくさん人がいる中


どうやって探すんだ?


彼女はどうやって俺を見つけたんだ?





「Reiちゃん」


......


「Reiちゃん」


......





無表情な彼らは俺に反応することもなく


ひたすら行ったり来たりを繰り返している


俺が歩いて探すしかないか


時計を見るともう0時4分





ダメだ、時間がない


ただ闇雲に探しても見つからなさそうだな


今日は一回引き返すか





Rei


今日もmission mobileの場所を設定して


時間がくるのを待つ


今は信じて


ひたすら伝えるしかない


想いは必ず届くはず


今日もあなたを探すから





Reila


またここに戻ってきた


会える保証はどこにもないけれど


やらないで後悔するなら


やって後悔した方がいい





場所を設定する


ピピピッ


扉が開く


時間がないからとにかく急がなきゃ





「どこにいるの?」


写真で見た曖昧な彼の顔をもとに


ひたすら探す  


今日も会えないかな


どこにいるの?





時間だけが過ぎていく


あと少ししか時間がない





あっ





いた





「Reila だよ、覚えてる?」


彼はじーっとReilaを見ている


表情を変えることなく





「私にメッセージをくれたでしょ


すごく嬉しかった」


彼はただ黙って見ている


聞いているというより、見ている


あと30秒しかない





「名前を教えて」


.....


ダメだ、もう戻らなきゃ





Haru


久しぶりに監視室のモニターを眺める


えっ、これって.....


この男


もしかして彼女の想いが彼の


顕在意識に届いたということなのか






明らかに彼は人を探している


特別missionは恋愛ではないだろう?


想いを届けて何になる






数値を上げることが


このmissionの最大の任務だろ


どいつもこいつも


じゃあ俺の相手は


今どこでどうしてるんだよ



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る