第56話 Life Rito Haru

Rito



Ritoにお願いがあるんだけど


大阪に俺の友達が住んでて


その友達の弟が今中学生なんだけど


来年高校受験を控えていて


勉強見てもらえないか頼まれてて


今まで部活漬けだったから


勉強はかなりやばいことになってる笑


塾じゃ追いつかないから


家庭教師をお願いしたいらしい


偶然Ritoの家から近いから


お願いできないかと思って





俺なんかに家庭教師が努まるのかと


悩んだが


こんな俺でも役に立てるならと


引き受けることにした


そんなんで今まで俺のしてきた


数々の失態が帳消しになるわけではない


それでもこんな俺を必要としてくれるなら





Haru



カチャカチャ


もうすぐ発売されるゲームが


ようやく完成する


ここ数ヶ月


ひたすら家にこもって


プログラミングに不備がないか


テストを繰り返す毎日だった


これが完成したら


弟たちを連れて京都に行く予定だった





以前の俺なら迷わず


一人旅行を選んでいただろう


人間嫌いだった俺も


無理やりに設定された環境のお陰で


今では当たり前のように


一つ屋根の下、弟たちと暮らしている


今弟と離れて暮らせるともし言われても


俺はきっと今の生活を選ぶだろう





京都に旅行に行く理由


修学旅行以来、気になっていた


というのももちろんあるけどもう一つ


Rikuの高校合格のお祝いでもあった





といってももう7月で


もっと早くお祝いしてやりたかったが


俺自身がバタバタしていた


あのStormという人の依頼を


ひたすらこなしていたから





Rito



今日は家庭教師をする子の家に


挨拶を兼ねて家に行くことになっている


一応真面目な大学生にみえるよう


それらしき服を着る





いや、最近はかなり真面目にやっている


と思う


何事も第一印象が大切だ


Ryoの言う通りほんとに近かった

 

電車で2駅の距離に家はあった





ピンポーン


「はい」


「折原と申します」


「Ryoくんから聞いてます


今日はわざわざありがとうございます


今開けますね」


ガチャガチャ





「こんにちは」


「わざわざありがとうございます


ごめんなさいね、下にも降りてこないで


今反抗期まっさかりで」


「ははは


分かります、俺もそうでしたから」


「さぁ、中に入って」


「上にいます、うちの馬鹿息子」


「分かりました


部屋に行っても大丈夫ですか?」


「えぇ、そうして下さい


私が呼んでも降りてこないんで」


「分かりました


そうだ、息子さんのお名前は?」


「Soutaって言います」


「分かりました」





Haru


いよいよ明日から3泊で京都に行く


今回は久しぶりに奮発した


「Riku Ren荷物の準備しろよ」


「.....」


ったく、返事なしかよ





最近反抗期の弟二人


一番下のRenも気がつけば中学一年


ここまであっという間だった





ふとmisson mobileを見る


今の数値は


頭脳 1400


精神 500


特殊能力 710





前回が


頭脳 1350


精神 430


特殊能力 700





頭脳は50伸びているが


それに対し特殊能力は10しか伸びていない


俺の特殊能力はパソコン関係なはずなのに


なぜ伸びない





頭脳に比例して能力も伸びると思っていた


能力の使い方を間違っているのか





それから精神レベル


すげぇ、これが一番上がっている


70も伸びたことになる

 

ただ問題なのが何が原因で伸びたのかが


よく分からない





Rito



トントン


.....


返事はない


もう一度ノックをする


トントン 


.....


やはり返事はない


反抗期か


それなら仕方ない


勝手に入らせてもらうよ


ガチャ


「入るぞ」





シーン


ベッドの膨らみを見れば


Soutaがあそこにいることは一目瞭然


今日は挨拶だし


この分だとSouta からの返事は


期待できそうにない


俺から一方的に話すか





俺も昔、通った道だから


気持ちはよく分かる


こんなとこで

 

あの時のどうしようもない経験が役にたつ





「俺の名前は折原Ritoね


Ritoって呼んでくれて構わないから」


「.....」


「学校はどうだ、楽しいか?」


まさか俺がこんな質問をする日が来るとは


ふと反抗期の俺にそれでも諦めずに


話しかけてくれた二ツ木先生のことを


思い出す





Haru



ようやく3人分の荷造りを終える


ピピピ


バイト先からのメール





Haru、いよいよ来週


お前がはじめて関わったゲームが


発売されるな


よく頑張った、これからも期待してる


今回お前に特別ボーナスだ


今日振り込んだから


それで弟たちと好きなもんでも食え





特別ボーナスそれはありがたい


さっそく会社のホームページを開いて


来週発売されるゲームの予告編を眺める





ふと斜め下を見ると


会社の取り組みの一つとして


施設に入っている子供たちにボランティアで


パソコンを教えに行っているというページを


発見する


知らなかった、こんなことしてるのか





Rito


「Soutaは今反抗期か


俺もそんな時期あったから


気持ちは分かる」


一瞬被っている布団が動く


はじめて反応したな





「誰とも口を聞きたくねぇし


誰にも分かってもらえねぇ


で、たまに出る言葉は


思ってる以上に酷いことを口走ってしまう」


すると


「うるせぇ!


お前なんかに何が分かる」


おっ、はじめて言葉で反応した


うるせぇ


反抗期らしい言葉だな


今日は帰るか


「じゃあ、Soutaまた来るからな


今日は挨拶だ」





「Ritoくん


やっぱりダメですよね


わざわざ来てもらったのにごめんなさい」


「いえ、最後にうるせぇの一言


頂きましたから、また来ます」





「そんなこと.....ほんとにすみません


実はずっと野球やってたんですけど


県大会の準決勝で


あの子のミスで


チームは逆転負けしてしまって


それからチームメイトとも気まづくなっ て


野球もやめて家に閉じこもってるんです」


「そうだったんですね」


「はじめにそこまで話したら


来てもらえないと思って


Ryoくんにはそこまで話してなくて」





「また来ます


明日から京都に旅行に行くんで


帰ってきたら


またお邪魔してもいいですか?」


「うちはいつでも歓迎です」


「では今日はこれで」


「Ritoくん


見捨てないでくれてありがとう」


「大丈夫ですよ


俺もいろいろあったんで」





Haru



斉藤さん


特別ボーナスありがとうございます


いよいよ、来週ですね


あとはユーザーの反応ですね


そういえばさっきホームページ見てたら


ボランティアで施設に


パソコン教えに行ってるんですね


はじめて知りました


木塚




時間をおかずにすぐ返信が来る





まさかHaruがボランティアに


興味を示すとはな


はじめうちに入ってきた時のHaruからは


考えられん


Haruみたいな若い子が行ってくれたら


子供は喜ぶ

 

で、さっそくいつからお願いできる?





えっ、俺まだ一言も行くとは言ってない


この感じだと


もう俺は行くことになってるよな





えーー


.....


俺がボランティア


この俺が





カチャカチャ


斉藤さん


俺、行くとはまだ一言も言ってません





.....





.....

 




カチャカチャ


斉藤さん


明日から京都に行くので


日にちはまた改めて連絡します


木塚









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