第55話 京都 Reila Rei

Reila


新人コンクールが終わった


結果はやっぱりダメだった


Nanaは今回はじめて参加して入賞した


当然だと思う


あんなに嫉妬していた気持ちが


今ではどこかにいってしまった





彼女は才能があると思う


それがちゃんと正当に評価された


多分今回のが最初で最後のコンクール


もう応募することはないだろう


かといって


絵を描くことを諦めたわけではない





まだ形は決まっていないけど


自分なりに絵に携わっていけたらって思う


やっぱり描くことが好きだから





「Reila」


「Nana見たよ、おめでとう


作品飾られてたね」


「うん、ありがとう.....」


「どうしたの?」





「もうReila


口聞いてくれないかと思った」


「何で?Nanaが入賞したから?」


「うん.....」


「確かに前の私は嫉妬してた


でもNanaの才能がそれだけすごいから


嫉妬してたんだよ


Nanaが私に絵を描くべきと


言ってくれたように


Nanaも絵を描くべき人だよ」





「ありがとう


Reilaもこれからも描こうね」


「うん、コンクールはもう参加しないけど


自分なりにやっていこうって思ってる」


「そうだ


Reila二人で旅行に行かない?


私行きたいとこがあるの」 


「旅行


いいね!で、どこ行きたいの?」


「京都!」





Rei


たまたま貴宝寺の近くのホテルが予約できた


平日だから空いてそうだし、それに安い


はじめて出たバイトの給料で行く





誰か誘おうかと思ったが


旅行に行くほど仲のいい友達はいないため


一人で行くことにした


今日もいつものようにブログに


このことを書く





アクセス数は今日は3


ほとんど見てる人はいない


そりゃそうだよね


こんなどこにでもいる女子大生のブログを


見る人がいるわけない





最近心理学の勉強をはじめたこともあり


精神理論やメンタルの法則みたいな本も


よく読むようになった


  



日常生活だけだと書くことがすぐに


なくなってしまうから


小学校の頃とかのことも


書くようになった  


あっ、コメントが来てる


はじめてだ


 



助けて.....





Reila


今日から2泊3日でNanaと京都に行く


修学旅行ぶりだ


京都はまた行きたいって思ってたから


こんなに早く実現するなんて





大学に入ってからなんとなくはじめた


インスタグラム


普段は代わり映えのしない写真ばかり

 

アップしていたが


旅行中はインスタ映えする写真


たくさん撮れそう





奈良から京都は近い


電車で1時間ちょっとだ


二人でお弁当とお菓子を買い込んで


電車に乗り込む


平日ということもあって電車は空いていた





「どこ観光しようか?


私見たいとこたくさんある


Reilaは?」


「私も」


貴宝寺の話はNanaにはしていない


夜中にこっそり一人で行く予定


「貴宝寺は、はずせないよね」





ドキン


「そうだね」


「あっ、ここも行きたい!」


まさかこうやってNanaとまた仲良くなって


旅行に行く日が来るとは思わなかった





Rei


助けて.....


メッセージはそれだけ


何かの間違いなのかな


明日は旅行に行く日


用意もまだ終わってなかったし


朝早く起きなきゃいけない





何かの間違いだよね、きっと


それに私には助けてあげることはできない


今は自分の将来のことで頭がいっぱいだから


パタン


パソコンを閉じる





翌朝


予定通り早く起きる


今日から3日4日の京都旅行


Reiのいる神戸からそんなに遠くない


予定通りの電車に乗りこむ





電車の中ですることがないので

 

ブログに今日のことを書く


平凡な毎日をただ綴るだけの毎日


でも


今日から3日間だけは


書くことがたくさんある





もともと歴史が大好きだった


ガイドブックを片っ端から調べて


マニアックなところを主にまわる予定だった


メインは貴宝寺だけど





ブログを書いてるとまた新しいコメントが


まただ

 

助けて.....


なんだろう


助けてって言われも





Reila


「Reila京都着いたよ!


やっぱり京都最高!


他とは雰囲気が違うよね」


「ほんとに」





久しぶりに来たけど


流れてるエネルギーっていったらいいのかな


ここはほんとに独特なものがある


日本なんだけど


京都という小さな国が存在してる感じ





「どこからまわる?」


「Nanaの好きなとこでいいよ!」


「えっ、いいの?嵐山の方にいきたい」


「そうしよう」


観光しながらインスタ映えしそうな


景色を見つけては


ひたすら撮る





Rei



まただ


なんだろう


悩んだあげくコメントすることにした





どうしたの?


何かあったの?





京都に到着


さっそく付箋だらけのガイドブックを広げる


3日間有効に時間を使えるように


計画はバッチリだった

 




えーっとまずは①竹林


京都に来ていきなり竹林


ガイドを見ていてすごく気になっていた


その後は定番の嵐山に行ってー


夜ご飯まで予定はびっちり


さぁ計画通りにまわろう




 

Reila



ホテルで夜ご飯を食べて部屋に戻る


もう22時


Nanaに適当に言い訳して出かけないと


Nanaははじめての旅行ということもあり


夜通し話す気満々





Rei



観光旅行1日目


計画通りに観光できて大満足


今ようやく夜ご飯


レストランで食事が来るのを待ちながら


ブログを開くと


メッセージが来ていた





お返事ありがとうございます

 

つい最近Reiさんのブログにたどり着き


読みはじめました


Reiさんが心理学の勉強をされてること


それから


Reiさんも小学生の時と中学の時にいじめに


あっていた記事を読んで


思わずコメントしてしまいました


今中学1年生でいじめにあっています


ある日突然はじまりました


きっかけはいくら考えても分かりません


はじめは陰で悪口を言われたり


無視されたりぐらいだったのが


だんだんエスカレートしてきて


今ではクラス全体から無視されています


先生にも親にも言えなくて


毎日孤独です





Reila


Nanaとお菓子を食べながら


時計をチラチラ確認しながら話す


さっきから時間が気になって


話が全然入ってこない





「Reilaさっきからどうしたの?」


「えっ


私、もう少ししたら


お父さんに電話してくるね」


「こんな遅くに?」


「あっ、うん


今海外出張中で時差があるから


今ちょうど向こうは


お昼ぐらいかなぁって思って」


とっさについた嘘にしては上出来





「Reilaのお父さん出張多いんだもんね」


「そうなのーちょっと電話してくるね」


「分かった、私まだ話足りないから


早く帰ってきてね」


「うん」




Rei


いじめられてるんだ


そうこの時期のいじめは


ほんとに些細なことからはじまる


それがあっという間に広がって


どんどん伝染して気がついたら一人


私もそうだった





きっかけはほんとに些細なこと


私の場合は  


ただ先輩と同じブランドの財布だった


ただそれだけ





はじめは無視されたり睨まれたり

 

それがだんだんエスカレートして


体操着を隠されたり


体育館に閉じ込められたり


物が飛んできたり


自分ではどうすることもできなかった





相談してきてくれた私に何ができるんだろう


いじめを経験して今私が改めて思うこと





kirariちゃんへ





Reila



ホテルを抜け出して


貴宝寺へと向かう


時刻は23時30分、辺りは真っ暗だった


よし0時には間に合う


しばらく歩くと貴宝寺に到着する





京都に着いた瞬間から


独特な雰囲気とエネルギーを感じていたが


ここはまたすごい


シーンとした静けさの中に


非常に高いエネルギーが流れているのを


感じる





やっぱりこのお寺には何がある


あと5分で0時になる


それとともに胸のドキドキが止まらない


石碑の前に静かに待ち


携帯のカメラで写真を撮る





あと1分


ドキン


ドキン


0時


Reilaはそっと石碑に手を当てる


その瞬間





Rei




kirariちゃんへ


私のブログを読んでくれてありがとう


いじめにあっているんだね


先生にも親にも言えない


その気持ちよく分かるよ


私もそうだったから  





いじめを経験した私があの頃を振り返って


kirariちゃんにアドバイスできること


今だから言える





無駄な経験は何一つないんだって


でもこれは今だから言えること


私も当時はただただ苦しかった


自分が何のために誰のために生きてるか


分からなかった


でもね、誰のためでもない自分の人生





楽しいことばかりじゃ


平凡な毎日じゃ


人は成長しないし


人生も平坦なものになって


退屈に感じるんだと思う


そうすると今度は刺激を求めるようになる





私ね、どんなに嫌われてもいじめられても


なぜかね恨んだりすることはなかったの


恨むという感情は


マイナスでしょ


マイナスなエネルギーを発したら


プラスマイナスの法則でまた


そのマイナスのエネルギーが


きっと自分のところに返ってくると思うから





ということは


kirariちゃんをいじめている子たちは今


いじめというマイナスのエネルギーを


発してしまっていることになるよね


それも毎日





だから


そのとてつもなく大きくなってしまった


マイナスなエネルギーは


どこに戻ってくるかというと


kirariちゃんではなく


いじめてる子たちに返ってくるから





kirariちゃんは堂々と生きていればいい


何も間違っていないんだから


普通ならほっておけばいいものを


あえてほっておかない


ほっておけない





それはkirariちゃんが彼女たちに


持っていないものを持っているから


羨ましいんだよ


羨ましくて仕方がないんだよ





大丈夫、必ず道は開けるから


この今の苦しくて辛くてやり切れない


この感情を味わいつくしてみてごらん


必ずkirariちゃんの成長につながるから


今は分からなくても


いつか分かる時がきっと来るから





どんなことも経験をしてみないと分からない


その立場にならないと分からない


今kirariちゃんにメッセージを書いていて


改めて思う


あの経験をして良かったって





改めてそう思うきっかけを


私に与えてくれてありがとう


私の心がkirariちゃんに救われたよ


私はいつもこの場所にいるから


何かあったらいつでも私を頼ってね


Rei





こんなんでアドバイスになったんだろうか


彼女の気持ちを救うことは


できたのだろうか





時計を見ると


時刻は23時45.分


残念ながら今日は貴宝寺には行けない


明日行こう




Rei



手を当てた瞬間


石碑からとてつもなく大きな光


修学旅行の時に触れた時よりも


大きくて眩しい光


次の瞬間





えっ....


扉が出現し


その扉が開く


ドキン


ドキン





心臓が飛び出るんじゃないかっていうぐらい


ドキドキしている


どうしよう


一瞬中に入るか戸惑う


時計を見ると0時1分


扉が開いている時間は5分


あと4分で閉じてしまう


ドキン


ドキン





Rei



翌日の夜22時


ブログを確認したが


kirariちゃんからの返事は来ていなかった


やっぱり誰かを救うなんて無理な話


でもせっかく出会えたわけだから


彼女には幸せになってもらいたい





昨日のブログの続きを書く


過去にいじめにあっていた時のこと


返事は来ていないけど


もしかしたら今日も


ブログを見てくれているかもしれない


kirariちゃんに向けて


慎重に言葉を選びながら書いていく





いつしかブログを書くことが


楽しくなっていた


書くことで自分の気持ちが救われるから


チラッと時計を見ると





大変


時刻は23時40分 


今日こそは貴宝寺に行かなきゃ


慌ててホテルを飛び出す





外は真っ暗


急ぎ足でお寺を目指す


携帯の地図を見ながら


どれぐらい歩いただろうか


お寺が近づいてきた





ドキン


ドキン


ここだけ流れているエネルギーが違う


それとともに


懐かしい感覚


修学旅行の時にも感じた感覚





時計を見ると23時55分


ドキドキしながら石碑に近づく


とっさに写真をとる


そーっと石碑に手を触れる


次の瞬間





眩しい大きな光


あっ.....扉だ


修学旅行で触れた時には現れなかった扉


ドキン


ドキン





扉がゆっくりと開く


ドキン

 

ドキン





そーっと足を踏み入れる


その間も胸のドキドキが止まらない




Reila 7月6日


Rei 7月7日


時刻0時1分





中を覗く


えっ、ここは.....何?


ずっと銀河司令センターにつながっていると


思っていたけど違った





人がいる


でも3次元世界ではない


確かに人は存在するんだけど


体の半分が透明の人たちが忙しそうに


動き回っている





Reila ドキン ドキン


Rei ドキン ドキン


どういうこと?


理解が追いつかない





時刻0時3分


あと2分で扉が閉まる


とっさに


「こんにちは」と中に向かって声をかける





聞こえないのか反応がない


ひたすら半透明の人たちが

 

行ったり来たりしている



 


もう時間がない


あーーー、中に入っちゃえ





Reila 「こんにちは」


Rei 「こんにちは」


すると突然動きが止まり


こちらを振り返る


ドキン





Reila Rei 「ここはどこですか?」


聞こえてはいるみたいだが、返事はない





訳が分からない


ふと下を覗いてみると


えっ.....


下にも人がいる





下の世界は半透明じゃない


真っ黒な人たちがやはり


忙しそうに行ったり来たりしている





すると何かがキラリと光るのが見える


急がないと扉が閉まる


Reila Rei ハァ ハァ ハァ


ドキドキが止まらない





バタン





ドキン


後ろを振り返ると扉はしまっていた


またはじめに見た、石碑に戻っていた


改めて石碑を眺める

 




この世界と上の世界をつなぐと言われている


つまりこの場所は


次元と時空をつなぐ場所である


上から下に降りてくる魂は


必ずここを通って降りてくると言われている


夜中の0時から5分間その扉が開く


しかしその扉は誰にでも見えるわけではない


見える者はつまり上から降りてきている魂だ


扉を何度も叩く者、現実に反映する


己が達した時にこの意味が分かるだろう


そのことは誰にも言ってはならぬ













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