第51話 接触

Rei


河原先輩と疎遠になって


3か月がたったある日


偶然駅で先輩とすれ違う


「久しぶり、元気してたか?


ラインしても返事こないし


ずっと気になってた


手の調子はどう?バイオリンは?」


「すみません


ずっと連絡してなくて


手はだいぶ良くなりました


バイオリンはもう弾けないと思います」





「えっ


Reiちゃんごめん


俺が勧誘なんかしなければ


俺がReiちゃんの人生を狂わせた」


「先輩のせいじゃないです


見学に行ったのも入部したのも


全部私の意思でしたことですから」





「いや、でも....」


「先のことはまた考えます


先輩お出かけですか?」


「今から弟に会う予定なんだ」


「先輩、弟さんいたんですね」 


「俺も会うのは今日がはじめて」


「えっ、そうなんですね」





「Reiちゃんは何してるの?」


「今まで買い物してたんですけど


疲れちゃったんで


ここのカフェでお茶しようと思って」


「俺もこのカフェで待ち合わせなんだよ


良かったらReiちゃんも一緒にどう?」





「いや、今日はせっかくはじめて


弟さんに会う日ですし


私いたら話しづらいと思うんで」


「全然


むしろReiちゃんいた方が場がなごむ


ケーキご馳走させてよ」


「じゃあ、お言葉に甘えて」





「良かった」


「いらっしゃいませ、何名様ですか?」


「3人


あとから1人来ます


あの窓際の席がいいんですけど」


「かしこまりました」





「良かった窓際空いてて


顔知らないから


待ち合わせは窓際の席になってる」


弟さんにはじめて会うんだ


何か複雑な事情があるのかな





弟さんが来るまで時間があったから


先輩の生い立ちを聞いていた


知らなかった


先輩がそんな複雑な家庭だったなんて





先輩はお父さんが浮気してできた子供


お母さんは先輩を産んですぐに


家を出ていってしまったらしい


その直後に弟さんの妊娠が分かって


家庭はめちゃくちゃだったらしい


これだけ聞いたら単純にお父さんが悪い


気がするけど


色々あったのかな





するとこちらに向かってくる1人の男性


「はじめまして」


「はじめまして」


ドキン


この人が先輩の弟さん?


「はじめまして」


男性は黙って座る





「彼女さんですか?」


「あっ、いや」


「後輩です」


先輩困ってる


すごい勢いで遮る





「私、やっぱり帰りますね」


「大丈夫だよ」


「気にしないでくださいね」


先輩とは全然雰囲気が違う





それよりも.....


私この人知ってると思う


会うのははじめてなんだけど

 

なんだろう不思議な感覚


向こうは特に何も思っていない様子





「俺、折原Ritoって言います」


Rito.....


「泉Reiと申します」


「Reiちゃん


宜しくねっていくつ?今」


「20才です」


「俺と同い年かぁ」





先輩とRitoくんのやりとりを


ひたすら眺める


その間も胸のドキドキが止まらない


なんだろう


この胸騒ぎ





実は20才を過ぎてから変化が


なんとなく人の気持ちが分かったり


話していたりすると


その人の過去がみえたり


今までそんなことなかったから戸惑っていた





先輩「ねっ、Reiちゃん」


Rei「えっ、なんでしたっけ?」


先輩「高校も一緒だったんだよねって話」


Rei「あっ、はい」





話が全然入ってこない


チラチラRitoくんを見る


すると一瞬目があう


でも次の瞬間また 先輩と話をはじめる


やっぱり向こうは特に何も感じてない





Rito「Ryoは彼女いるの?」


先輩「一応いるよ」


前の私なら先輩の彼女の話には


敏感に反応していた





でも今は聞き流している自分がいる


先輩とRitoくんはメールでは


頻繁にやりとりをしていたらしく


はじめこそぎこちない感じだったけど


今ではほんとの兄弟みたい


先輩良かった、楽しそう


苦労してきたみたいだから






そろそろ私は帰ろう


Rei「私、そろそろ帰りますね」


先輩「えっ、もう帰っちゃうの?」


Rito「そうだよ、もう少しいたら?」


Rei「あっ、でも明日用事あるんで」





先輩「そっか、また学校でな」


Rito「Reiちゃんまた!」


Rei「はい」





また会うことはないと思うんだけど


流れで返事をする

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