第30話 Darkness of Rito

Rito中学2年


これまでに停学4回


警察に補導された回数5回


この数が多いのか少ないのか分からない





ただそのたびに呼び出される母親は


俺に嫌気がさしたのだろう


ろくに口もきかず


親子関係は最悪な状況だった





いつからこうなったのか


何でこうなったのか


今となってはよく分からない





きっかけは先生との別れからだと思う


かといって、先生が悪いわけでもない


もう会うことはない


過去の人だ


そう、過去の人


今さら思い出したところで


会えるわけでもないし


今の俺を見たら、幻滅するだろう


どうしようもないから

  




どうしようもないって分かってるけど


いわゆる不良仲間と遊ぶのを


やめるつもりもない


そこしか俺の居場所はないから


そこが俺の唯一の居場所だから





気がつけば


特別missionのこととか


これが闇なんだとか


それどころじゃなかった


自分が何のために生きてるのかすら


よくわからなかったから





で、今警察にいる


そう6回目の補導


捕まった理由は


たばこを吸ってたから


別にたばこが吸いたいわけではない


美味しいとも思わない


ただ仲間がしたら俺もする


ただそれだけ





誘いを断って1人になるぐらいなら


馬鹿騒ぎして意味のないことして


空っぽでも仲間と盛り上がってた方が


よっぽど気が楽

 




この孤独はうめられない


何したってうめられない


別に埋まらなくていい


束の間でも忘れられれば





なぜか母親が今日はいくら待っても来ない


いよいよほんとに俺に愛想をつかしたのか


別に来なくてもいいんだけど


成人の人の迎えがなければ


帰ることが許されない


仕方なくさっきから


来るか来ないか分からない


母親を待っている

 


 


警察から


担任に連絡をすると言われたその時


「遅くなってすみません」


息をきらして来たのは


母親でも担任でもなく


二ツ木先生だった





えっ、何で


訳がわからない


何でこの場所が分かったんだ

 

「ご家族の方ですか?」


「いえ、小学校の担任です」


「そうですか


母親が来なくて困っていたんですよ


まぁ、担任の先生なら


今回はお引き取りをお願いします


ここに引き取りのサインを」


「はい」





目の前にいるのは


紛れもなくあの二ツ木先生


何できたんだ


何で俺が警察にいるって


知ってるんだ?





先生「折原くん、久しぶりだね


元気だった?」


Rito「何しに来たんだよ


何でここが分かったんだよ」


先生「先生言ったじゃない


折原くんの人生で大事な時に


関わりたいって」


Rito「意味わかんねぇ」





先生「学校はどう?


気の合う友達出来た?


もう子供じゃないから


いちいち聞かれたくないか」


Rito「学校は別に普通」





先生「そっか


これだけは覚えておいてね


先生はいつも折原くんの味方


例えどこにいたとしても


折原くんは優しくて思いやりがあって


どんなことがあっても


そこからまた立ち上がれる


マイナスなこともプラスに変えれる」


Rito「.....」





先生「ねぇ、お腹すいたから


ラーメン食べに行かない?」





ガラガラ


時計を見ると23時


制服を着ている俺と私服を着ている先生


周りにはどんな関係に


うつるのだろうか


間違いなく恋人には見られないだろう





永遠に縮まらない距離


永遠に変わらない関係性





あんなに会うことをのぞんでいたのに


いざ先生を目の前にすると

 

素直じゃない俺が


いつしか素直じゃなくなってしまった俺が


邪魔をして、言葉が出てこない





俺が先生の話にほとんど反応しないため


食事があっという間に終わってしまった


言いたいことあるだろうが


もうこれを逃したら2度と会えない





先生「時間も遅いしそろそろ帰ろっか」





帰り道


話すこともなく無言でひたすら歩く


もうそろそろで駅に着く





先生「折原くん、元気でね


今日会えて良かった


先生、折原くんのこと忘れないよ」





なんだ、もう永遠に会えないみたい


じゃないか


そうか、もう永遠に会うことはないのか





駅に着いたところで


先生が手を差し出してきた


握手......か


ぶっきらぼうに対応する





「バイバイ折原くん


最後にこっち向いて」と言われ


チラッと見る


先生の目が少しだけ赤かった


泣いてるのか?


どういうつもりで泣いてるのか


その真意が分からない





少し歩いて後ろを振り返ると


先生の姿はもう見えなかった


曲がり角もなく真っ直ぐな道なのに


姿が見えないことが不思議だった



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