ある少年の自立(逃避)

 少年の行為は逸脱していた。

 それは社会に対する反抗そのもの。無能者が全能者に挑むようなもの。

 あまりにも重大な咎を受けるだろう少年は、関わる人々全員から拒絶を受けることになる。

 それまで微かな哀れみ程度は向けていた両親させ、少年の全てを否定するようになった。

 しかし、彼の罪が公になることはない。

 もし人の耳に入ることがあれば、少年だけではなく、係る全てに災いを及ぼすからだ。

 侵さざるべき管理者への冒涜。

 その罪は隠匿され、少年はもはや寄る辺なき存在となった。

 ところが彼にとっての絶望とはならなかった。

 既に望みはあったからだ。

 例えいかなる罪に問われようと、自らが抱いた願いという名の呪いのために、少年は神へと手を伸ばすことを止めなかった。

 孤独の中に埋もれようとも、彼は縋るべき呪い(願い)によって生き続ける。

 ――どうして自分は生まれてきたのか?

 神のみぞ知る答えを、神に問うために。

 見果てぬ願いは枯れ果てることもなし。

 その重たさ故に、彼は全てから見捨てられたのだ。

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