第4話
「違う……違うだろ、俺。俺はもう少し、ニヒルなキャラのはず。断じてむっつりスケベなんかじゃない。そう知的にいこう、クールになれ!」
登校前までの出来事を振り返り、一度冷静になろうと決める凪。
そもそも、警察に連絡をしなかったのは、目的に合致するから。決してイヤラしい欲望やら欲求に流されたからではない。そう自分に言い聞かせる。
がちゃがちゃッ! ドンドンッ!
ドアをノックされた。フィリアが着替えを終えたという合図だろう。それでも、再びお色気マンガのようなハプニングが起こるのは困る。なので、恐る恐る扉を開く。
フィリアはきちんと服を着ていた。ピチッとした黒い薄手のセーターと、赤いチェックのスカート。そして、ふとももまで伸びるハイソックスは、いわゆる絶対領域のラインで太腿に食い込んでいる。
「ほっ……とりあえず、ちゃんと着れたよう、だ……ん?」
ポヨン。
ピチッとしたセーターの下で、フィリアの柔らかな塊が揺れる。
おかしい。
凪はすぐさま、部屋のほうへと目を向ける。すると、そこには一枚のブラジャーが。
「な、何でブラジャーを付けてないんだ!」
「それ、わからない。どうやって着るの?」
「そ、そんなもん俺が知るかぁ! はぁはぁ、待て待て……クールに行こう、クールに」
どうしたものかと思案する。
着る方法がわかる誰かに頼るか。たとえば、ツミキ……いや、フィリアについて説明のしようがない。そもそも、「この子にブラを付けてやってくれ」などと言えば、良くて顔が凹むし、悪ければ穴が空く。ならいっそ、そのまま放置するか。それは間違いなく理性の崩壊をもたらすだろう。マニアック過ぎる。ノーブラ、ダメ絶対。
となると残る方法は一つ。自分が調べて、着せてやる。
「検索か……まぁ、今回は仕方ないな。こんな状況は想定してなかったし」
諦めた表情を浮かべつつ、凪は左手を顔の前に持ってくる。
「デバイス・オン!」
ニューロデバイスが使用者を認識し、起動モードに入る。
「検索、ブラの付け方」
デバイスが指令を受諾する。電脳通信網(ニューロネット)の海から、指定されたワードに繋がる情報を瞬時に選び出される。そして、必要な情報が凪の脳内に直接流れ込んでくる。
凪はフィリアを手招きする。そして、ブラジャーを持ちながら、検索した情報を丁寧に説明してみせた。
「わかったか? これで付けられるだろう?」
「うーん、わかんない。ナギ、着せて」
「そうか、それじゃ仕方ないから俺が……ってなるかっ!」
「なら、いらない」
「ぐぅぅぅっ! お前に必要なくても、俺には必要なんだよ! 犯罪者にならないためにも!」
「なら、ナギが着せて」
「よしわかった……って、だから!」
押し問答である。しばらく同じようなやりとりを繰り返し、凪は説得を諦めることにした。
「一度お手本をしたら、次から自分でつけろ。いいなっ!」
「……わかった」
凪はフィリアにセーターを脱ぐように促す。露わになる少女の背中は、透き通るような白。まるでシルクのようなきめ細かな肌が、電灯の明かりに輝いている。
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