第3話ケンジとタカシ、お手紙編


『拝啓 お父様、お母様


 お元気ですか?あなた方の最愛の息子、ケンジ、ケンジは元気でございます。


 東京に来て早二年が経ちました。タカシ君とアツシ君と共に元気に東京ライフを満喫しておりす。


 先日のクリスマスもタカシと二人でアツシ君の為に盛大なサプライズパーティを開き、無事大成功を収めました。


 アツシ君は嬉しさのあまり発狂し、その嬉しい気持ちを報告しに実家にまで帰る始末。全く可愛い友人です。


 大学生活のほうも慣れ友達も沢山……あ、えっと、まぁそれなりに、あ、うんと、まぁ出来たはずです。皆気のいい連中でとても楽しい、あれ……。楽しい大学ライフを満喫する予定です。


 大学での生活を少し書き記したいと思います。


 あれは大学に入った時の事でした。


 沢山のサークルが勧誘を楽しそうにしている中俺達三人も何かいいサークルに入ろうと探していると、ボディビル部の人たちから勧誘を受けました。当然俺たちは断りました。もっと爽やかなサークルに入って可愛い彼女を作りたい思いで東京まで来たのにボディビルはないと。


 しかし彼らは話だけでもといい俺たちを無理やり部屋まで連れ込みました。そこが地獄の門だと知らずに。


 中に入ると何故か全裸で酒を飲みかわすマッチョな男たちが居ました。俺たちは身の危険を感じ逃げようとしたんですが入り口には200kgのダンベルが重なり逃げられないようになっていました。


 とりあえず落ち着いて水でも飲めとフルチンの男達に差し出されたのはアルコール度96%のスピリタスでした。それを知らずに一気飲みしてしまった俺たちはそこで記憶が途切れました。


 目が覚めると何故か全裸になり、そして股間の上には入部届に俺たちの名前がサインしてある紙のコピーが置かれていました。完全にやられました。


 こうして無事(?)サークルに入部させられた俺たちの大学生ライフはここから始まりました。


 タカシとアツシも今ではムキムキ、とまではいきませんがそれなりに筋肉質になりました。あの顔で筋肉質なので本当に気持ち悪いです。今度見てみてください。本当に気持ち悪いです。


 おかげで今だに彼女が出来ません。俺もタカシもアツシもできません。それどころか女子と話す機会がありません。どうしたらいいですか?貴方達の息子は困ってます。どうしたらいいですか?


 この前初めてナンパをしてみました。女性と中々話す機会がない俺たちにとってかなり冒険をしたと思います。結果としてあと一歩という所までは行きましたが駄目でした。


 ちゃんといつでも行ける様に下着を履かずにチャック全開で声をかけたところまでは良かったんですが、声のかけ方がよくなかったようです。それまで顔を赤らめてこちらを見ていた女性がいたのですが、声をかけた瞬間に恥ずかしがって逃げてしまいました。タカシとアツシと違って俺はイケメンすぎるようです。バランスとは難しいものだと感じました。


 大学の成績は問題ありません。大学でもトップクラスに入れたおかげで来年の授業料は免除になりそうです。期待しててください。


 ただやはり問題はサークルですね。何なんでしょうあの先輩たちは。水の代わりにスピリタスでプロテインを呑んでいます。何なんでしょうあの先輩方は。筋トレしている時は絶対に服を着ません。何故誰も止めないのでしょう。あれ程の地獄絵図は見たことがありません。


 しかしタカシとアツシはすっかり馴染んで今では授業中も大抵フルチンです。もう彼らは末期だと思います。どうにか助けられませんか?何か案があれば教えてほしいです。


 少し短いですが今回のお手紙はこれくらいにしたいと思います。今年は実家には帰れそうもありませんがお年玉とお小遣いアップを希望します。切実にお願いします。


 それではお体に気を付けてくださいね。


 あなた達の最愛の息子、ケンジ、ケンジでした。』





『父ちゃん、母ちゃんへ!


 元気?俺タカシは元気にやってるぜ!


 成績優秀、サークルも順調!


 可愛い彼女もできてもう大学生活言うことなしだぜ!


 あ、年末年始は帰れないから!


 でもお小遣いはちゃんと送ってね!


 あとこの前の仕送りありがとう!


 それだけ!


 じゃね!


 タカシより』

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