退院
9月11日火曜日・
広日記『1時54分起床』
広は仲良くなった患者さんと退院最後に話す為、廊下に出ていつも話す場所の、病棟の大きな窓で患者さんを少しの間、待っていた。そして患者さんが病室から出て来て会話を始める。
広日記『4時・4時頃から6時まで仲良くなった患者さんと話した。』
患者「何時起きですか。よく眠れましたか」
広「2時起きです」
患者「今日退院でしたよね」
広「はい。今日でこうして話すのも最後ですね」
患者「あっという間の日々でした。退院なされる時は出来たら見送りますよ」
広「ありがとうございます」
患者「昨日も病室で絵を描いていました。見ます?」
広「ぜひ」
患者「今持って来ますね」
広に絵を見せる患者
広「上手な女性な絵ですね」
患者「たいしたことありませんよ」
広「いえ。凄く上手です。私もSNSに作品をアップしているんです。実物は病院に持っては来る必要がないと思い、持って来ませんでしたが、同じ創作をしている人と会えて良かったです。良かったら画像見ますか?」(持って来る暇が無かったなんて言えない)
患者「ぜひ」
患者に作品を見せる広。
患者「良いと思いますよ。その感性大事にして下さい」
広「ありがとうございます」
患者「だいぶ日が昇って来ましたね。退院の日に良い天気に恵まれて良いことだらけですね」
広「この窓から見る景色も今日で最後。なにもかもが本当に終わる。なにもかもが最後」
患者「入院したのが6月ですもんね。長い入院お疲れ様です」
広「そう言って頂きありがたいです」
患者「それでは、そろそろ病室に戻ります。では」
広「では」
広日記『7時朝食が届いたアナウンス。パン、ミネストローネ、バナナ、牛乳、お茶。』
広日記『7時15分朝食完食』
広日記『7時45分朝食後の薬を配るアナウンス』
9時ナースや成田先生が広の病室に来て、「お母さんはまだ?」と広に聞く。病院側は送り出す準備が出来ていた。
広は「まだ連絡が一つも無い」と答えながら、荷物を準備して待っていた。広もあらかた退院の準備は出来ていた。
10時広は通信機器のメッセージ機能で海里と会話した。
広「どのぐらいに病院に来る予定?もうナースさんも成田先生も、退院だから送り出してあげたい気が満々なんだけど」
海里「さっき目が覚め、今支度中!急いで行くよ!」
広「了解」
その後ナース達に「お母さんはまだ」と聞かれた時は広は「今向かっているそうです」と答えて海里を待っていた。
数分後海里からメッセージが届いた。
海里「病院の最寄り駅に到着した!荷物用にスーツケースも持って来た」
広「分かった」
広日記『11時15分母迎えに来る』
広は通信機器のメモ機能で日記を書き始めた。
海里「ゴメン遅くなった。とりあえず、このスーツケースに荷物を詰めるよ!支度して!」
広(退院の時間に余裕を無くしたのはどこのどのたでしょうか?指揮らないでもらえます?)「分かった」
成田「あっ、お母さん来た!荷物を詰めているところ失礼しますが、お伝えしたいお気持ちがあります。菊川広さん、約二か月半の入院お疲れ様でした。そしてお母さんの海里さんも、毎日のように面会に来て下さって、大変お疲れ様でした。私からは以上です」
海里「いえいえ。たいしたことありませんでしたよ。広の為に来ていたのですから」
成田「それではナースステーション前で、待っていますので、お忘れ物には注意して下さい。結構この辺とか忘れ物多いんだよな。では」
広日記『12時25分精神科病棟のナースさんや成田先生にお世話になった挨拶をした。
成田先生「退院おめでとうございます」ナースさん「退院おめでとうございます」海里「今までお世話になりました。もう二度とここに戻らぬように支えて行きます。広、お礼を言うの」私「ナースさん達と成田先生、お世話になりました。ありがとうございました」見送りに来た患者さんにも別れを告げ、病棟を出た。そしてエレベーターで一階に降りて退院の手続きをした。そのあと病院のレストランでお昼ご飯。私は入院中患者さんとの会話で、そばが食事に出てこなかったと言うのを思い出し、ざるそばを食べることにした。食事中に海里「今回の入院で広は人との会話の仕方を学んだと思う。今まで家族と距離が近かったかも知れない。言わなくても、なんとなくで分かっていて言わないでいた。むしろ分かっていたふりをしていたのかも知れない。でも入院して連絡し合ったり、患者さんと話したりして、会話のチャッチボールが以前より出来るようになったと思う。前はSNSを通して人の心を傷つけてしまったりした。それでも入院して言葉で励まし合ったりもしたと思う。言葉は凶器にもなるし、誰かを癒したり出来るんだよ。広はそれを学んだ。さあ食べたら帰ろうか」そのあとタクシー乗り場に行き、荷物を載せて私達もタクシーに乗り、帰路に着いた。』
広日記『13時36分今まで病院に戻るから、あえて書かなかったが帰宅とついに書ける。そして病院に戻ることも無い。だから本当の帰宅』
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