保健師との面談そして通信機器解禁

8月3日金曜日・

広日記『13時15分成田先生が保健師さんと話ししているのか、診察室は診察中という風に扉にマグネットで表示されていた。その為私は靴ずれの傷も治っていたので、無理もなく病棟内を歩き周っていた。しばらくすると私が角を曲がった時に、ちょうど成田先生が診察室から出て来て、私を呼ぶ為か私の病室、1212号室の隔離室へ向かう姿が見えたので、私は急いで後を追って成田先生を呼び止めた。』

そうして診察室に入った2人。診察室の中には保健師と母海里が居た。

海里「ほら挨拶しなさい」

広「あっ、はじめまして菊川広です」

保健師「はじめまして~!武井と申します。よろしくね!じゃあ、広さんのことを教えて欲しいな」

海里「宿題のメモ見せな」

広「メモを持って来る」

保健師武井「メモ?」

海里「武井さんに本人のことが分かって伝えられるように宿題にしてメモを書かせたんです」

保健師武井「なるほど」

広は隔離室に戻り、昨日ようやく完成させた7月18日に海里から出された宿題のメモを診察室に持って行き、保健師武井に手渡して見せた。そして保健師武井はメモを見ながら会話を始めた。

保健師武井「保健師は相談に乗ったりするし、健康について、分かりやすく言えばナースさんや学校の保健室の先生みたいなのが保健師です。保健所はそういう健康に関係のあることの時とかに相談に来る場所です。創作好きなんだね。創作ってどんなもの?」

広「色々と。例えば昔はマンガを描いて作っていたから想像は得意」

保健師武井「太った人が苦手なんだ。私ぐらいなんかは大丈夫?」

広「全然大丈夫。標準体型だと思いますよ」

保健師武井「なら良かった。お菓子が好き…音楽が好き…食事は苦手なの?お菓子は好きなのに食事はどうして苦手なの?」

広「それは…」

海里「痩せたい思いでなかなか食べようとしないんです」

保健師武井「そうかだから太った人が苦手なのかな。今の活動を本格化するってどういうこと?」

広「創作活動のこと」

保健師武井「想像し過ぎて自分を苦しめちゃうんだね」

広「妄想が膨らみ過ぎて暴れる原因にもなっていると思う」

保健師武井「寝るのも起きるのも苦手なんだね。これは今後のことも考えると、規則正しく生活出来た方が良いよ。まだこれから先のこととして頭の片隅には入れておいて。学校行っていた時はどんな感じだったかな?」

海里「午後から遅れて行ったり、そのまま今日は授業はお終いだから明日おいでって言われることもありました」

広「でも午前中に時間通りに間に合っていた日もあるよ」

保健師武井「電車でどこまで遠出したことある?この質問はどれくらい電車に乗れるかの能力を知りたい」

広「初めて行く場所は少し慣れないと難しい」

保健師武井「なるほど。でもみんなそんなものでしょう。他に知っておいて欲しいことってある?」

海里「小さい頃から手術をしていて、逆に脆くなっている箇所があるんです」

保健師武井「大体分かりました。広さんに向いていそうな場所を提示出来るのは一週間後以上になると思います」

成田「早く退院出来なくてショックかも知れないけど、退院に向けて前進しているので安心して下さい。毎週武井さんに来てもらうのも、なんですから何か方法はありますか?」

保健師武井「お母さんに施設の資料を郵送して、面会時に広さんとお母さんのお2人で判断してもらう手はあります。お母さんはどのくらいの頻度で面会に来られていますか?」

海里「ほぼ毎日は来ています」

保健師武井「なら出来なくはないですね。それではこのくらいで失礼します」

海里「今日はありがとうございます」

広「ありがとうございます」

保健師武井は診察室をあとにした。

海里「少し休憩する為に16時まで別の階に広を連れて行っても良いですか?」

成田「良いですよ。それでどこの階に行かれるんですか?」

海里「6階辺りに」

成田「分かりました。ナースの方に伝えてから行って下さいね。それといつ頃戻って来ますか?今14時前ですけど」

海里「16時には戻って来ます」

成田「分かりました。では16時に続きの話しをしましょう」

烏山大学病院の6階には広が行った美容室の他に1階と同じく売店がある。そしてさらに小さな庭園もある。大きな屋上庭園は7階にある。広と海里は6階に着くと6階の小さな庭園に出た。そして広はまた夏を感じられたと思い、嬉しくなった。そして少しして室内に入り、イスと机があるのでのんびりした。この時広は保健師武井との会話の始まりから終わりまでを日記に書いた。そうして売店でも飲み物を買っていたので飲み切って16時手前に精神科病棟に戻る為エレベーターに乗って病棟に戻った。そして16時に診察室で三者面談が始まった。

成田「じゃあ早速だけど通信機器について話して行こうか。使用する時間は13時から消灯までにしようと思っています。いかかですか?」

広「うーん。出来れば午前中も使わせて欲しい。そこまでどうせバッテリーの持ち良くないから、消灯頃までにはナースさんに充電を頼めると思う」

成田「それはまだ長いかな。こっちも妥協して言っている部分はあるんだよ」

広「それでもなー。日中は小型音楽再生機みたいに使えたら良いのに」

成田「お母さんはどうですか?」

海里「レクリエーションとかへの参加もして欲しいので、極力短く時間設定しても良いかと思います」

成田「なるほど。じゃあ13時から18時にして、病棟の活動を優先する方針にしましょう」

広「えー」(余計なこと言いやがって)

海里「2日にあったレクリエーションにはちゃんと参加していたみたいですけどね」

成田「その調子だよ。それでSNSの使用方法について、プライバシーもある為他の患者さんの投稿や病院についての投稿はダメだよ。それとこれは当然だけど、人や自分を傷つけたり、脅すような投稿はしないでね。あと投稿はまずは、家族の居る時に内容確認してもらってからにしようか」

広(最初だけね。明日からはどうせ、自分の物だし確認されなくても投稿するし。て言うかしたい)

成田「それとフォロワーが減った時はどうしようか」

広(これから発信して行く日々になるんだから減るより普通は増えるでしょ。でも万が一を考えると…)

広「誰がいなくなったか確認する」

成田「それだけで落ち着くの?」

広「今までは数字だけだったけど、これからは誰がいなくなったとかを確認出来るし、投稿して発信出来るから不安材料は減る」

成田「それだけじゃ少ないから他に無い?」

広「じゃあナースさんにフォロワーが減ってショックだったことを伝える。あとはその時の気持ちを紙に書くとか?」

成田「そうだね。あとは、とんぷく薬を使うのも手だね」

海里「気分転換に歩くとかはどうでしょう」

成田「それもありですね。ひたすら歩くと。まず、最初の通信機器の使用ルールはこんな感じでしょう。紙に使用ルールのメモを書いたので壁なりに貼っておいて下さい。拘束の時みたいに次第に自由になるから、今は腑に落ちないところはあるとおもうけど辛抱してね。じゃあ今回はこの辺でおしまい。お疲れ様でした」

海里「ありがとうございました」

広「ありがとうございます」

広日記『16時約束通り病棟に戻り、そのまま成田先生と三者面談が始まった。通信機器の使用についての話し合いだった。腑に落ちないところがあったが成田先生も妥協した部分はあったようだ。それにしても日中は全ての時間を使えるようにしてくれれば良かった。今後は通信機器の使用時間の拡大が目標だ。』

そうして20分程の三者面談が終わり、早速通信機器を使えるようになり、海里の確認の元、SNSに広の作っていた全アカウントに少しずつ今日から再開しますなどと言う投稿をした。どのアカウントもフォロワー数は減っており、しかし一番はメインアカウントと創作アカウントのフォロワー数が気になった。入院直後メインアカウントは84フォロワーまで減っていたのを確認出来ていたが、さらに再開してから20近くのフォロワーが減っていた。創作アカウントは10フォロワー程減っていた。広はショックを受けたが、またフォロワーを増やして行けば良いと考えた。それは海里からも言われた事だった。その為フォロワーを増やす事も目標になり、生きる希望となった。しかし広が驚いたのは通信機器の通知の量だった。ほぼ一ヶ月以上未使用だった為にSNSの連携しているメールアドレスにメールがたくさん来ていた。この使用許可が出た8月3日金曜日には全ての通知を処理出来なかった。

広日記『17時38分夕食が届いたアナウンス。白米、炒り鶏、ブロッコリー炒め、めかぶとろろ、お茶。』

広日記『18時夕食完食ちょうどナースさんが通信機器を回収に来た』

広日記『18時7分夕食後の薬を配るアナウンス』

海里「通信機器を使えるようになって良かったね。明日ゆっくり使いなね」

広「でも海里が余計なこと言わなかったら、消灯まで通信機器が使えた」

海里「だって病院での生活をちゃんとして欲しかった」

そのあとはなんだかんだたわいもない話しをして過ごした2人だった。

海里「じゃあそろそろ帰るね。見送って」

広「うん良いよ」

広日記『19時27分母帰宅ハグして握手して手を振り見送り別れた。』

広日記『19時55分面会終了まで5分前のアナウンス』

広日記『20時30分寝る前の薬を配るアナウンス』

広日記『21時12分消灯の為明かり消される』こうして保健師との面談と通信機器解禁の日は終わった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る