夏を感じた

広日記『16時母面会に来る。7月31日火曜日の成田先生との四者面談で、誰かの付き添いありなら、病棟の外に出られて病院内を自由に、行動出来ることが可能になったので、母からの提案で病院の1階に降りることになった。久しぶりの地上だ。そして母から「病院の外に出て、どれだけ外が暑いか体験してごらん」と言われた。私は当然(病院からの外出許可が出ていないし、逃走を図ったとも思われかねない)と思い病院の外に出るのを渋ったが、しかし母の強引なススメで私は、1階の出口から出た。冷えた病院の中に居たせいか、母や波姉が言っていた外は暑いと言うより暖かく感じた。しかし16時30分からお風呂の予約を取っていた為

十数分しか外出が出来なかった。だがしかしその僅かな時間だけでも、私はやっと夏を感じられた。また夏を感じられるかな』

広日記『16時28分病棟に戻り、母は私が外に出られて「嬉しそうだったね」と言った。そして隔離室でお風呂の支度をして、浴場に向かった。』

広日記『16時35分入浴』

広日記『17時20分隔離室に戻る。母は私が入浴中、別の階で過ごし6階にある美容室のパンフレットを持って帰って、先に隔離室に戻っていた。』

海里「明日病院の中に美容院あるから散髪しに行っておいで。6階だって。8月3日に保健師さんと会うしサッパリした方が良いよ。それと明日はママは家で休養を取りたいしナースさんの付き添いでさ。どう?」

広(明日は海里は面会に来ない。美容室に行って精神科病棟の外に出るのも悪く無いな。良い気晴らしになりそうだ)「良いけど予約とか必要無かったっけ?去年利用した時、確かそうだったはず」

海里「じゃあ確かめにナースステーションに行ってナースさんに聞こうか」

広「うん」

海里「すいません。明日の美容室の利用は可能ですか?」

ナース「もうこの時間だと明日に、ならないと予約が取れなかったはずです。ですよね?」

ナース「そうですね。明日ですね。明日当日に予約が空いているか確認して、空いていたら空いている時間に予約を入れて、美容室の利用が可能になります」

海里「なるほど。ありがとうございます。じゃあ広、明日予約入れるんだよ」

広「分かった」隔離室に戻る2人。

海里「じゃあ今日もフォロワー数を確認してあげようか」

広「もう減って行っているだけだからしなくて良いよ」

そうすると海里は嬉しそうに「ついにそういう考えに辿り着いたか!」と言った。

広はSNSに思い出などを詰め込んで来た。それが崩れ去ろうとしている現状に、生きる気力を含め全てに希望が見出せず、諦めの意思を込めて「退院したら死のうと思っている」と広は発言し海里に思いを告げた。

すると必死そうな思いで海里は「広は今までたくさんの人に支えられて来た。みんなに守られて来た命をまだ若いのに諦めないで。広にはまだ生きる道がある。人生がある。刑務所の中じゃなかったから本当にマシなの。だからやり直したくてもやり直せない訳じゃないの。広はまだやり直せるのよ」そう海里は言ったが広はまだ、やり直せるとは思っていなかった。SNSのアカウントの終わりは人生の終わりだと感じていた。

広日記『19時42分あの会話のあとは病棟内を2人で歩き周ったり、多目的室や隔離室で、たわいもない話しをした。そして母帰宅。母と握手してハグして手を振り見送り別れた。』

広日記『19時55分面会終了まで5分前のアナウンス』

広日記『20時35分寝る前の薬を配るアナウンス』

広日記『21時15分消灯の為明かり消される』こうして8月1日水曜日は終わった。

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