運命の日

7月31日火曜日・

広日記『1時30分、3時45分、8時20分起床。今度は平成最後と7月最後を病院で迎えてしまった。しかしSNSや通信機器が使えるかどうかという運命の日だ。ひとまず朝食が運び込まれているので食べるとしよう。パン、ミネストローネ、バナナ、牛乳、お茶。』

広日記『8時49分朝食完食』

広日記『10時7分成田先生が診察室に呼びに来た。ついに運命の時が来た。』

広日記『10時15分私と成田先生と母とナースさんでの四者面談の話し合いが始まった』

成田「それでは話し合って行こうと思います。まず、広さんから要望はありませんか?」

広(いきなり通信機器を使わせて欲しいって言っても断られそうだしな)「大部屋に移れたら移りたい」

しかし25日に暴れた事が結果的に響いたらしく

成田「25日に扉を蹴るなどをして暴れた事から大部屋に移るのは難しいでしょう。しかし隔離の解除はしましょう。」

ついに重たい扉が24時間開くことになる。それでも広は一刻も早く通信機器を使わせて欲しくてつい「通信機器を使えるようにして欲しい」と言った。

成田「SNSを通して病院の事や、また物騒な事を発信してしまうのでは?」と懸念して使用させるのを渋った。

広「そんなことしないもん」

成田「本当に?一番心配なのは患者さんや病院の情報が、外に広さんを通して漏れてしまう事なんだよ。それでも病院の情報は漏らさず通信機器でSNSを使えるかな?約束出来る?」

広「うん。約束」

成田「分かった。じゃあ今度話し合う8月3日に使用許可を出しましょう。なので、もう数日はガマンしていて下さいね」

広「分かりました」

成田「しかし、いきなり全ての時間に、通信機器の使用の許可は出さず、時間に制限を設けるのはどうでしょう」

広「えーいいよ。そんなことしなくても」

海里は広が内心イヤになる程賛成の意思を表した。「良いですね!時間に制限を設けましょう!」

成田「詳しくは8月3日に決めましょう。良いですね広さん。それと隔離の解除という事でコチラが一方的に決めちゃう形になるけど良いよね?通信機器はあと僅かで使えます」

広「うーん。SNSしたかった…」

海里「仕方ないでしょ。話し合いは譲って譲られてと言う、譲り合いなんだから」

成田「ナースさんからは何かありますか?」

ナース「そうですね。隔離の解除もされたことにより時間が出来ますので、今後退院後も見据えて人と交流する為、定期的にあるレクリエーション活動に、参加をして欲しいと思います」

成田「では今日話した内容は、隔離の解除、通信機器を8月3日に使用許可を出す事、そしてレクリエーションへの参加でした。でも本当に隔離の解除と言う事でコチラが一方的に決めちゃう形になるけど良いよね。ごめんね。では面談をおしまいにします。」

海里「ありがとうございました」

広「ありがとうございます」

そうして譲り譲って話し合い、通信機器の使用許可日が決まり、隔離の解除もされ、今後はレクリエーションへの参加も決まった。

診察室を出た際、成田先生は広に一言声を掛けた。「一ヶ月以上の隔離、お疲れ様でした」

しかし広はSNSという居場所に帰ることが出来ずにいることに、まだ心は休まらずにいた。

広日記『19時55分面会終了まで5分前のアナウンス。昨日までは隔離再開5分前というのも意味していた。しかし今日からはただの面会終了まで5分前のアナウンスだ。今日もしあの成田先生からの、隔離は続くけど通信機器は使えるのと、隔離室から出られるけど通信機器は使えないという二択が出されていれば、今日も隔離のままで通信機器を使える選択の方を選んでいただろう。だが成田先生も言っていた。「隔離の解除という事でコチラが一方的に決めちゃう形になるけど良いよね」と。』

広日記『20時32分寝る前の薬を配るアナウンス。この時間にもナースステーション前に列を成して、列に並ぶ日が来るとは思わなかった。良いことなのかな』

広日記『21時13分消灯の為明かり消される』こうして運命の一日が終わった。

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