別れの日から20日

7月23日月曜日・

広日記『16時35分ふと思えば今日で、元主治医安東先生の涙と私と母の涙を流した、あの別れの日から20日。元主治医安東先生は私を診る時に「担当になったからには最後まで診ます」と言ったと母から聞いたことがある。恐らく最後の別れの日に安東先生は別れることも悲しかったのはあるだろうけど、私を最後まで診れなかったという責任を果たせなかったことに、悔しさで涙目になって別れを告げたのだろうとも思った。それとやはり思い入れのあった患者に、命の脅迫をされたのも悲しかったのだろう。色々な思いが元主治医安東先生には、あったんだ。』

広日記『16時46分母面会に来る』

海里「波音から伝えられたけど保健師さんには連絡してないよ。時間も時間だったから。それと今、隔離室に来る途中で成田先生に会って話したよ。成田先生は8月3日に保健師さんに、来てもらうように連絡していたみたい。広の早く退院したい気持ちも分かるけど落ち着いて過ごせている時が良いってさ」

広「でもさ、そうしたら8月3日まで退院出来ないじゃん」

海里「まあ落ち着いて過ごせるようになった時の方が良いからね」

広「もう充分落ち着ているよ」

海里「これは先生の判断だから、なんとも言えない」

広日記『17時37分夕食が届いたアナウンス』

広「8月3日に保健師さん含めての、四者面談があるってことは、去年と同じく病院から花火大会を見ることになるじゃん」

海里「でも次は無いように…て言うか今回はやらかしちゃったし、本当に次は無いんだよ。花火すら見られない牢屋の中だったかも知れない」

広日記『17時41分夕食が運び込まれる。白米、アジのカレー粉焼き、煮物、さつまイモ煮、お茶。』

『18時5分夕食完食』

広日記『18時13分夕食後の薬を配るアナウンス』

しばらく広は会話を日記に、書いて沈黙が続いた。すると海里が喋り出す。広は(またか)と思ったことを言われる。これもいつものように広は日記に書き記した。

海里「広には社会に出て欲しい。家に閉じこもってないで、外の空気を体感して。前にママはおばあさんを、道案内して途中まで一緒について行ってあげたの。そういう小さなことで良い。社会に、外に、出て体験して身にして欲しい。あと明日24日火曜日、成田先生と3人で話す時に、大部屋に移してもらえるか相談しようよ。いつまでもこの中じゃイヤでしょ。だからせめて大部屋にさ」

広「うん。それは良いね。相談してみよう」

海里「こんな牢屋みたいなところの中に居るより、少しずつ退院に向けてステップを踏もう。さっき話した時に成田先生26日から30日の間はいないみたいだから、先にしてもらえることはしてもらおう。それとこの前出したママの宿題の進み具合はどう?ママが出したのを見せて」

広は海里からの宿題を自分なりに構成したメモ書きを手渡して見せた。

海里「なるほど。じゃあもう一つ内容を追加していい?8月3日までで良いからね。それじゃあそろそろ帰るね。また明日またね」

広「またね」

広日記『19時9分母帰宅。ハグしてハイタッチして手を振り別れた』

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