広の過去と病院内での宿題

7月5日木曜日・

広日記『11時40分目を覚ます。夜に飲んだ頓服薬のせいか、寝過ぎた上にまだ眠い』

広は昨夜消灯後に23時10分頃「落ち着かない」とナースコールをしていた。

ナース「なんで落ち着かないの?」

広「SNSが出来ないから。それに成田先生にも母親にも言われて入院している事は投稿しない方がいいって。でもSNSに投稿したいから落ち着かないの。だからせめてSNSに入院していてSNSが一時的に出来ないっていう事をフォロワーさんに伝えたい」

ナース「そっかそれは分かったし先生にも伝わるようにしておくね。とりあえず落ち着く薬、頓服薬を持って来たから飲んで寝ようね」

広「まだ日記書き終えて無い」

ナース「じゃあ11時半までにしようか。そうしたら、それまでに書いて薬飲んで寝ようね」

7月4日23時30分

ナース「おっ書き終えた?じゃあ薬飲もう」

そうして広は頓服薬を飲み、しばらくしてから眠っていたのであった。

7月5日

広日記『12時昼食が病棟に届いたアナウンス』

広日記『12時7分昼食が運び込まれる。うどん、つけ物、白玉ぜんざい、お茶。12時43分完食』

広日記『13時ナースさんが来て検温と食器を片付けてくれた。私はついでにお風呂に入れてもらえるように頼んだ』

広日記『14時36分お風呂にナースの三澤さんが今なら入れるとの事で呼びに来た。浴場に向かう際雑談をした。』

広日記『14時45分入浴15時7分隔離室に戻る。戻る際も雑談をした。SNSでも様々なものが存在している。ちょうど流行りのSNSだったものの話題になり「それはしてないの?」と聞かれ私は「やってみたけど写真も撮らなきゃだから面倒になってやめた」と答えた。すると「流行りには乗ろうとしたんだ」と笑われた。』

そのあと広は小型音楽再生機で広の好きなシンガーソングライターの歌を聴いて過ごした。

広日記『16時58分母面会に来る。』

海里「暑い~!来たよ。今日も緑茶買って持って来たよ。それと夕食食べ終わったら歩こう。歩くのは大事だよ」

広「うん」

海里「それで今日警察の方に行って、広が今病院でどう過ごしているかとか状況報告して来たよ。あとは6月のあの日は警察もドタバタしていたみたいで、また広の生い立ちとか病歴とかを今日聞かれたよ。リストカットし出した時期や去年の入院の経緯とか、細かく質問されて聞かれた」

広「そうなんだ」

海里「警察の人に言われたけど、「お子さんの相談に乗ってあげて下さい」って、もし殺害予告をあの日見せて相談してくれたら全力で止めたよ」

広「止められたかな」

海里「止められていた。て言うか止めていた。あと思ったのは、リアルの外で人とのコミュニティーを作って欲しいと思った。何故なら今後社会に出て行く際の練習になると思うから」

広「でももう創作関係で一つ団体に所属している」

海里「それはそうだけど、それはそれで仲良くすれば良い。ママの言っているコミュニティーは社会に出て今後働けるような施設の事を言っている」

広「創作活動も本気だ」

海里「そうね、あなたにとっては大切な居場所なのね」

広「うん」

広は大雑把だが日記に今の海里との会話を書いた

広日記『隔離室での母との会話・「警察に状況報告したよ」と言う。生い立ち、病歴、リストカット、去年の入院の理由を話したと言った。殺害予告を見せてくれたら全力で止めていた。リアルの外でコミュニティーを作ろうとも言っていた。』

広日記『17時33分病棟に夕食が届いたアナウンス』

広日記『17時40分夕食が運び込まれる。白米、白身魚のムニエル、金平、もずく酢の物、お茶』

広日記『18時夕食後の薬を配るアナウンス』

広日記『18時17分夕食完食・18時29分夕食後の薬来る』

広日記『18時40分隔離室から出歩く』

まず2人は多目的室に向かい入って会話した。

海里「今日警察に行って、改めて思った。誰しもいつかは死ぬけど、広が殺してしまっていい命なんて無いんだよ。話しは変わるけどもうすぐで七夕だね。願い叶うと良いね」

広「確かにそうだね…でも話し変わり過ぎ!残念ながら願いはもう半分は叶わなくなっちゃったけどね」

海里「じゃあそろそろ歩こうか」

広「うん」

海里「ママが来る時間どのくらいがいい?早め?ゆっくりめ?」

広「早い方が歩ける時間作れるから早めで」

海里「分かった。夕食前には到着するようにするね」

広「うん」

海里「それとさっきの続きみたいな話しになるけど、退院して更生して周りの人を安心させて。広自身もね。安心出来るように。今後の緊張が取れない。でも良くしていこうね」

広「うん。て言うか今年は病院で花火見たくないな」

海里「そうだね。そうしたら今は、元気になって申し訳ないなって気持ち持って家族にも相談出来るといいね」

広「そうだ。フォロワーの数を確認させて」

海里「82で変わって無い」広は安心した。

海里「きっと変わらないんだよ。だから入院していたとか説明しなくてもいい。せめて戻って来ましたぐらいでいいと思うよ。今日は警察に行ったせいか肩が重いよ」

また2人は多目的室に入って会話した。

広「もしかしたら小さい頃パパに殴られていたから保護施設に行っていたかも知れない」

海里「でもパパは酒乱じゃない」

広「でも下手したらそうなっていたかもと、たまに思う」

海里「若かった頃は確かにキレやすかった。でももう今は暴れないでしょパパは」

広「今はそうならない事も分かっているけど自分の記憶の中には殴られた事が残っている」

面会終了まで間も無くとなり、2人は隔離室に戻る。

広「実はね、成田先生から宿題を昨日出されたんだ。暴れることに良い事と悪い事の両方を書いてって」広は海里に宿題を手渡して見せた。

『暴れて良い事悪い事』の内容はこうだ。成田先生の文字で『あばれる・いいこと・わるいこと』と書いてあり、その下に広の文字で『いいこと・思いを伝えられる、人に触れられる、弱さを見られない…わるいこと・昔の父親と同じことをしている嫌悪感、相手に深く記憶を刻み込む、人を傷つける可能性がある、恐いと思われる』と広は書いておいた。

広「良い事があれば、それは逆に治療のきっかけになるって成田先生が言っていた。」

海里「でも暴れる事に良い事なんて無いし書いて欲しく無かった。」

広「でも治療の為だもん」

海里「そうね…」

19時55分

面会終了まで5分前のアナウンスが流れる。

海里「じゃあ帰る前にママからも宿題。SNSのフォロワーが何故減ったから殺害予告をしたか分からない。それは成田先生も同じだと思うし知りたいはず。だからそれを考えて明日の成田先生と話す時に説明出来るといいね。だから紙に書いておくんだよ」

広「うん分かった」

そうしていつも通り握手して海里は帰って行った。

広は殺害予告の動機がSNSのフォロワーが減ったと言うことでなら答えられるが、どういう感情になって殺害予告に至ったのかの動機の説明が出来ておらず、あの時の感情を具体的に説明出来ないといけないと理解して、恐らく退院への課題の一つなのでは?と考えた。広は考える事にした。あの時どんな気持ちが一番強かったのかを。

広日記『21時40分母の言っていた、どういう感情で殺害予告をしたかを整理し書き終わった。』広の殺害予告をした時の感情を整理してまとめた物の内はこうだ『「フォローフォロワーが減った時期の感情」不思議、何故、謎、疑問、どうしていなくなる、このままドンドン減るのでは、恐い、悲しい、自分を守らなくては、やけ、自暴自棄』という内容だ。広日記『22時20分明日の成田先生と話すことの内容を出来るだけ早く伝えたくてナースコールを押してナースさんを呼んだ』

広の信頼しているナースが来た。遅くなったが彼の名前は長渕という。少し実はなまりが口調から感じられるが、さほど気にならない程、標準語を使えている。以上簡単なナース長渕の自己紹介だ。

長渕「なにどうしたの」

広「母親が言っていたけど、SNSのフォロワーが減って殺害予告したのは分かるけど、その時広はどういう感情だったのって聞かれたから紙にまとめなって言われて、だから紙にまとめた。今から言うね」広は感情をまとめた紙の内容を長渕ナースに言って伝えた。伝えた理由として明日、成田先生に起きたら伝わっている状態にしたかったからだ。

長渕「ほう分かった。それじゃあ明日成田先生に伝えておくね」

広「明日成田先生と話す予定があるんだ」

長渕「そうなの。それじゃあ自分からも伝えるんだよ。もう夜だからおやすみ」

長渕は隔離室から出て行った。

23時頃・広は退院が長引くのではあるまいかと不安に駆られ始め、壁を殴り、蹴り、「早く退院させろ!」と叫んで暴れた。ナースコール越しに長渕ナースが「隣の病室から苦情が来ている」と広は言われるもまだ暴れた。重たい扉を蹴り、叫び、壁を殴り、蹴りした。

7月6日金曜日1時頃

長渕ナースが来て、広をなだめる。

長渕「どうして暴れ出したのさ」

広「今日の成田先生との会話で退院が長引くんじゃないかと急に不安になったから」

長渕「隣の病室か苦情も来ているし、逆に暴れたら退院日まで日にちが伸びちゃうよ。頓服薬持って来たから落ち着いて寝よう。もう夜なんだし静かにね」

そうして広は頓服薬を飲み暴れた事までを日記に書き記した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る